2021 Fiscal Year Research-status Report

The Analysis of the Melodic Structure of Ainu Traditional Music and the Basic Research into the Materials of Northern Peoples' Musics for the Prospective Comparative Studies

Research Project

Project/Area Number	18K01183
Research Institution	Hokkaido Museum
Principal Investigator	甲地利恵北海道博物館, アイヌ民族文化研究センター, 研究主幹 (20761638)
Project Period (FY)	2018-04-01 – 2023-03-31
Keywords	アイヌ音楽 / 北方諸民族の芸能 / 神謡 / 語りもの音楽 / 旋律型 / 民族音楽学 / 伝統ポリフォニー
Outline of Annual Research Achievements	前年度に引き続き、下記(1)(2)(3)を柱立てている。 (1)アイヌの歌の旋律構造の分析：　アイヌ語が旋律に乗る際の基本的な特徴を掴むため、まず歌謡的な要素より語りとしての要素の比重が大きい“語りもの”的な音楽であるところの一つ「神謡」の旋律的特徴を探ることを継続して進めた。2021年度は、前年度に試みた神謡３編を対象とする旋律型の分析・比較の結果をもとに、神謡を語る旋律型についての仮説を立てた。この成果は、北海道博物館アイヌ民族文化研究センター研究紀要第7号に「神謡の旋律型とその分類方法に関するノート－折返し句の旋律と物語本文の旋律との関係性について」と題した研究ノートを掲載した。この分析にあたって使用した二次資料としての採譜の校閲と清書は、臨時職員を雇用してデータ化しており、次年度以降の研究にも活用する予定。 (2)アイヌ音楽および関連する北方諸民族の芸能に関する情報収集：　本研究は主に北海道内に伝承されてきたアイヌ音楽を対象としているが、樺太（サハリン）のアイヌ音楽および周辺の諸民族の音楽との地理的・文化的・歴史的な関係性を意識して、その情報収集、資料収集を柱立てして進めてきた。2021年度は目立った進捗はないが、田辺尚雄（1883-1984）の著作やリュミエール社による映画フィルムを再収した映像資料など古書を購入し、初期の録音録画による記録や調査についての情報を補完した。 (3)北方諸民族の芸能を記録した音声・映像資料の所在（国内）調査：　昨年度より(3)については当初予定から対象を縮小した。昨年度以来、国内での対象資料として当初予定に掲げていた谷本一之（1932-2009）による研究資料（国立民族学博物館蔵）は、所蔵機関において整理作業が内々に進められていることから、本研究では道内に未整理のまま遺されているとされる同氏研究資料についての情報収集・整理を進めている。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 3: Progress in research has been slightly delayed. Reason 前記のとおり（２）（３）については当初予定より規模を縮小したことから、その分「神謡」の旋律についての分析・整理を進め、研究ノートの形で仮説を立てることができた。一方で、当該ノートの対象としなかった資料群についての分析・考察についてはこれからであること、縮小したとはいえ（２）（３）についてはもう少し集中的に調査や作業を進めておきたいところであること、などから、やや遅れていると言わざるをえない。
Strategy for Future Research Activity	最終年度はアイヌ音楽の旋律構造の分析に一定の目処がつくことを目標として進める。アイヌ音楽の伝統的な旋律の様相を明らかにする手がかりの一つとして、神謡の旋律型の類型について、前年度に引き続き分析・考察を進め、言葉の抑揚に比較的忠実な旋律の作られ方を明らかにしていくことをめざす。具体的には論考としてまとめ所属機関の研究紀要などへの投稿を計画する。またアイヌ音楽の特徴の一つであるポリフォニー性の音楽的な様態や現状、旋律の重要な要素の一つである声の音色（発声）との関連性について、最新の知見の提供を得るための研究会の開催も視野に入れて進める。北方諸民族の音楽文化の情報収集については引き続きエフォート比率は下げているが、その中で、これまで得た未公開・未整理資料の情報整理をさらに進め、整理作業としての一段階（具体的にはメタデータの補充、リスト整備など）を区切ることをめざす。
Causes of Carryover	新型コロナウイルス感染症の拡大により前年度に引き続き出張ができなかった。状況推移を見守りながら、出張による調査や打ち合わせを実施するのと並行して、知見を求める相手方を招聘しての研究会の開催なども策定し、これに充当させることを検討中である。