2020 Fiscal Year Annual Research Report
タイ北部、ミエン(ヤオ)の歌謡と歌謡語および歌謡の儀礼への応用に関する研究
Project/Area Number |
18K01186
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
吉野 晃 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (60230786)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミエン / 歌謡 / 歌謡語 / 女性シャマン / 新しい宗教現象 / 廟 / 即興歌 / 定詞歌 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は新型コロナウィルス蔓延により、タイ等で現地調査できなかった故に、これまでに収集したデータを分析することに注力した。 Ⅰ女性がシャマンとして儀礼執行する新しい宗教現象について (1)従来の儀礼と新しい宗教現象とを比較すると、儀礼執行者(男性/女性)、降神(なし/あり)、儀礼執行者の類型(祭司/シャマン、シャマン祭司)、唱え言(読誦/歌)、儀礼執行に用いる言語(儀礼語/歌謡語)、祭神(道教・法教の神々/道教・法教以外の神々)において悉く異なる特徴を持ち、そのため女性たちの祭祀活動は従来の儀礼と対立せず、従来の儀礼がカバーしていない隙間を埋める形で展開されてきたことを解明した。 (2)この宗教現象の組織面を見ると、チエンラーイ県HCP村の廟に集い儀礼を行う女性シャマンたちは、指導的な男性祭司および指導的女性シャマンあるいは古参の女性シャマンとの師弟関係を複数積み重ねることにより緩く組織されていた。しかし、男性祭司の離脱に伴い女性シャマン集団は分裂した。組織が二者間関係の重複のみに依拠しており、全体を集団として統合する機序がなかったために容易に分裂したことを明らかにした。 Ⅱ歌と歌謡語に関する分析 (1)ミエンの歌は14種ある。その中には歌詞が固定され書写により広く知られている定詞歌と、その場限りの即興歌との両極がある。14種の歌は、定詞歌←→即興歌と、漢語歌詞←→漢語ミエン語混雑歌詞の両極の間に分布し、それぞれの歌の種類によって使われる語彙に多様性があることを明らかにした。即興性が高くなるにつれて歌詞にミエン口語や歌謡語の語彙が多く入り、漢文として読むのが難しくなる訳である。(2)令和元年度にはミエン語辞典の中から歌謡語語彙を800以上抽出したが、令和2年度には、それ以外の歌謡語語彙を、吉野が収集した歌詞などの資料から新たに120余り見出した。
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Research Products
(6 results)