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2021 Fiscal Year Research-status Report

動物の身体をめぐる3つの位相からみる生物とモノの連続性

Research Project

Project/Area Number 18K01189
Research InstitutionHokkaido University

Principal Investigator

山口 未花子  北海道大学, 文学研究院, 准教授 (60507151)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2023-03-31
Keywords動物 / アート / 狩猟実践 / あいだ / カナダ先住民 / モノ
Outline of Annual Research Achievements

昨年に引き続き今年度も、covid-19の影響で予定していたカナダでのフィールド調査ができなかったため、文献資料の渉猟及び、日本における狩猟実践を通じた動物認識の変容について調査を実施し、成果を公表することに力を入れた。
文献としては昨年度から取り上げてきたドゥルーズ&ガタリやインゴルドにおける、人と動物との間に生成するもの、を重視する立場に立脚しながら、岩田慶治のアニミズム論や煎本孝、リチャード・ネルソンらが記載した北米先住民の自然誌にも通じるものとして、動物との一体感や交感といった感覚にひらかれた視点と、丹念な狩猟・加工・利用について経験的な調査の重要性を確認した。
これに基づき日本における狩猟実践、特にカナダ先住民と同様のしのび猟及び罠猟の実践を通じて動物認識が、狩猟、解体、加工、利用といった流れの中でいかに変容していくのかを丹念に追うことを心掛けた。また、自分と狩猟対象動物だけでなく、自分たちを取り巻く環境や様々な動植物といった存在がきりわけられないものとして存在し、影響しあっているという点についての経験的な理解から、今後こうしたものとの関係も考慮に入れた分析の必要が示唆された。さらに解体や加工の過程で、動物という人と情動の束をともにする存在が、肉という「モノ」へと変容するような感覚が認められる一方で、モノのなかに動物との絆のようなものがあることで、貨幣でのやり取りではなく贈与という形が選択されやすいという感情的な背景も把握することができた。
こうした経験は、図書や論文として公表するだけでなく、民博における共同研究の中でも検討し、動物への特別な感情や情動によって動物を表現することの根底にある、動物を理解し、動物の形を瞬時に判別するという狩猟の技術としてのアートという側面があるということなどについての、議論を進めることができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

当初の目的であった、ユーコン準州における複数の先住民の動物認識の比較研究を、covid-19の影響で実施しることができなかった。国内での調査も、自身の狩猟実践以外の狩猟者の調査は同様に困難であった。
一方で日本における狩猟実践を通じ、動物やそれ以外の存在と、「ともにある」感覚についての経験的な調査という新しい領域を深めることができた。また共同研究を通じて動物の認識についてもアーティストや人類学者らとの議論の中で、本研究の事例や成果を検討することができる環境があったために、理論面では研究を進めることができた。
こうした点から、本研究は当初の計画よりやや遅れているものの、成果が着実に得られていることもあり、今後挽回することは十分可能であるということができる。

Strategy for Future Research Activity

これまでに、日本での狩猟実践を通したカナダ先住民、とくにカスカの動物観についての経験的な検証や、文献の検討と共同研究などを通じた理論構築という面において、十分成果を上げることができた。
一方で内陸とリンギットなど、ユーコンにおいて視覚芸術による動物描写が豊富な人々を対象にした比較研究は実行できていないことから、カナダでのフィールド調査を可能な限り実現させることが今後の最も大きな目標である。また、これまでの研究を通じて、狩猟実践が動物以外の存在も含めた諸存在との相互関係を把握するのに非常に有効であることが明らかになるなど、新たな知見も得られていること、民博における共同研究による理論構築の有効性が示されたことなどから、本研究を共同研究も視野に入れた形で発展させていく可能性についても検討をはじめ、今後につながるような枠組みを提示したい。

Causes of Carryover

コロナのために今年度予定していた海外でのフィールド調査が実施できなかったため、使用しなかった分を次年度に回し、フィールド調査の費用に充てるため。

  • Research Products

    (5 results)

All 2022 2021

All Journal Article (1 results) Presentation (3 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] ユーコン先住民に学ぶ動物とともに暮らす方法2021

    • Author(s)
      山口未花子
    • Journal Title

      学士会会報

      Volume: 950 Pages: -

  • [Presentation] 動物の皮から生まれるモノたち -ユーコン先住民の皮利用に学ぶシカ皮活用の可能性2022

    • Author(s)
      山口未花子
    • Organizer
      オンライン公開研究会 「皮革素材の利用と技術に関する領域横断的な調査研究~循環型ビジネスモデル構築のために~」
  • [Presentation] 動物の皮から生まれるモノたち:カナダ・ユーコン準州の先住民による実践から2022

    • Author(s)
      山口未花子
    • Organizer
      講座「毛皮と北方民族」
  • [Presentation] ユーコン先住民の視覚芸術と口頭伝承2021

    • Author(s)
      山口未花子
    • Organizer
      国立民族学博物館共同研究「描かれた動物の人類学」2021年度第3回共同研究会
  • [Book] マンガ版マルチスピーシーズ人類学2021

    • Author(s)
      奥野 克巳、シンジルト、MOSA、宮本 万里、山口 未花子、近藤 祉秋、近藤 宏、大石 高典、島田 将喜
    • Total Pages
      344
    • Publisher
      以文社
    • ISBN
      978-4-7531-0365-2

URL: 

Published: 2022-12-28  

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