2023 Fiscal Year Annual Research Report
Analyzing the continuity between organisms and objects through a comparison of the animal body as three phases
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18K01189
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山口 未花子 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (60507151)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 動物 / カナダ先住民 / アート / モノ / あいだ / 狩猟実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年は、これまでコロナの流行によって中断していたカナダユーコン準州の先住民コミュニティにおいてフィールドワークを実施し、主に内陸とリンギットの彫刻家および自治政府において自然資源管理を担う調査協力者から動物を中心とした資源利用や、アートの制作について聞き取り及び経験的観察などによってデータを収集した。特に動物資源の獲得から毛皮や骨、角などの加工、アートへの活用など、動物の身体を直接用いるアートの制作を通じて、資源としての動物の物理的な側面だけでなく象徴的な側面からも検討することができた。このなかで、毛皮や角などを用いることが集団を象徴するクラン動物や社会的地位を表すだけでなく、その動物を捕獲し解体することなどを通じた個人と自然とのつながりや物語の生成に寄与することが確認できた。さらに動物の毛皮や羽などが単に視覚的な効果を担うだけでなく、踊りなどを通して動きの変化、特に動物らしさを付与するという点についても明らかになった。また日本における狩猟実践と動物の身体の加工や活用についても行い、調査同行者への聞き取りからも動物が捕獲され、屠畜され、解体される過程で徐々に動物から肉や毛皮へと認識や情動が移り変わる様子とそうした変化のトリガーとなる要素として温度や器官としての「目」の持つ役割などが指摘された。さらに、『いきる智慧はフィールドで学んだ』(ナカニシヤ出版)を執筆し本科研研究の成果を反映させ、動物から人類学をとらえ直す作業をおこなった。 期間全体を通し動物が資源として利用される間に、人間が動物をどのように知覚し、情動が生じるのかという点について狩猟実践や伝統的な動物の資源利用、アート制作の現場を具体的にかつ経験的に調査することで深く掘り下げることができた。また、その成果はすでに著書として刊行されているほか2024年度には展示としても発表される予定である。
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