2019 Fiscal Year Research-status Report
Cultural and Medical Anthropological Investigation on Art Therapy-Oriented New Regional Social Movements Deriving from Cultural Psychiatry Applied for Hybrid Socio-Cultural Local Contexts
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18K01197
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Research Institution | Tokyo Online University |
Principal Investigator |
宮坂 敬造 東京通信大学, 情報マネジメント学部, 教授 (40135645)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地域に入り込む芸術療法 / ハイブリッド文化社会集団過程の葛藤と再統合 / 先進国以外で展開する文化精神医学 / 文化医療人類学 / 文化精神医学的芸術療法概念の変容 / 心理歴史誌を軸とした文化療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019 年度は、ジャマイカでの予備調査も含め以下の海外出張調査を行い、本研究の進捗をはかった。2019年4月1日~4日と9月16日~10月7日の期間、,マッギル大学社会文化精神医学研究所所長 L. J. Kirmayer 教授の招聘状により、同上研究所短期客員研究員として、本研究の研究調査に従事した(文献調査・討論・調査テーマ関係インタヴュー【個別面談は以下の方々に対して、それぞれ2回以上各回1時間程度】: 同所長、および同大学 Institute of Community and Family Psychiatry, J. Guzder教授、N. D'Souza研究員, 同 Dep. of Social Studies of Medicine 名誉教授の Allan Young 教授、人類学部 E. Kohn 准教授、社会学部 M. Weinfeld 教授、また、Dep. of Religions and Cultures, Concordia Universityの S. Lapidus 講師と同社会学人類学部 D. Howes 教授等と複数回)。 また、2020年2月10日~19日、ジャマイカ Kingston にて、The Caribbean Institute of Mental Health & Substance Abuse 主催第2回 Psychohistoriographic Cultural Therapy Workshop (同12日~14日各8時間集中の訓練研修: 海外からの初参加回) に参加。同地で発展してきた文化精神医学的集団療法の独自特徴を参与的に理解する機会とし、開発者のFrederick Hickling 医博と 実践者 G. Walcott 医博と各2回のインタヴューにより同地ラスタファリアン運動とこの療法の展開の経緯と資料蒐集を行った。University of West Indies で開催された 5th Annual Global Mental Health Conference (同15日) に参加後、2日間、近隣地区の小学校でのこの療法の応用実施場面を参与観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は本務校関連でエフォートが予定より低下した影響があったが、2019年度は、ジャマイカ Kingston 訪問現地調査を実施し、遅れを一定程度取り戻すことができた。ジャマイカ独自色もつ Historiographic Cultural Therapy の開拓者である University of West Indies 医学部名誉教授 Frederic W. Hickling 医博 および、その実施臨床家である G. Walcott 医博とそのスタッフとのインタヴューを通じて、ジャマイカの黒人の苦難の歴史、ラスタファリアン運動にも関連した背景のもとにこの療法が開拓されてきた具体的経緯の了解が可能となり,同医博と協力して地域社会へのこの療法が示す芸術療法的特色への改訂の助言と効果調査を実施してきた Institute of Community and Family Psychiatry, McGill University の Jaswant Guzder 医博,さらに彼女および Laurence J. Kirmayer 所長 ( Division of Social and Transcultural Psychiatry, McGill University) のもとで地域社会への導入適用による効果研究を数年おこなってきた同上 Institute 所属の N. D'Souza 研究員にマッギル大学およびジャマイカ Kingston で集中的に接触・討論・インタヴューできたことが本研究の進捗を本年度高める結果に繋がった。本年度はブラジル現地調査は行えなかったが、同地内科医師 Vitor Pordeus 医博とのメール通信と Kingston の 5th Annual Global Mental Health Conference 参加時における対談を通して、リオ・デ・ジャネイロおよびサンパウロにひろがって実施されているブラジル版の地域に入り込んだ芸術療法運動の2020年度における調査計画をたてることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は9月にジャマイカ、2月にブラジルでの海外調査を企画中である。とはいえ、今春から新型コロナウィルスの世界的流行により、海外出国・相手国入国受諾が困難になっているという想定外の状況が出てきている。とくに、ブラジルの感染状況がかなり深刻と報道されるため、さらに慎重に計画の見直しが必要となるかもしれない。この現状のため、海外相互渡航が許可再開されることを期待しつつも、当面は、今後の見通しを確実なものとしていくために状況の推移を見守る、という段階を臨時に置かざるを得ない。この点をまず記すが、期待としては、ぜひふたつの海外調査を今年度に実施し、working paper(s) 執筆のための基礎資料をさらに確保したい。Psychohistoriographic Cultural Therapy については担い手となるジャマイカ Kingston 地域スタッフの研修の近年の情報が得られ、The Caribbean Institute of Mental Health & Substance Abuse 主催による初の海外参加者研修に参加できたので、小集団過程 に潜在する社会文化的葛藤を引き出しつつ psychic centrality (集団全体の心の深層が主軸として凝縮する傾向性) の集団内における焦点化を目指す方法について体験的に了解可能となった。この点を working paper にまとめつつ,以下の基礎研究を踏まえて、文化医療人類学的な検討枠組の開発をおこないたい。上記の新型コロナウィルスによる状況の悪化とも部分的に関係するが、本研究を文化と芸術療法の関係の研究領域に結びつけていくために必要な基礎研究の準備を国内でおこなっていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2019年度に、、ブラジル海外出張調査も行うつもりでいたが、日程の調整が結局つかず、このことが主たる要因となって残額が生じた。2020年度にブラジル海外短期調査を行う計画としたので、次年度使用額が0でないかたちにした上でないと、ここにあてていく経費に不足があるという理由もあった(同地での短期調査には残額よりも経費が必要でもあった)。 次年度は、ブラジルでの新型コロナ・ウィルス流布が深刻度を増しているという想定外の状況が生じてきたので、その点での不確定性を考慮せざるをない点も判断にいれる必要があるものの、本研究にプラジルでの短期海外調査が不可欠のため、現在計画としては次年度にぜひ行いたいと考えている。
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