2022 Fiscal Year Research-status Report
Cultural and Medical Anthropological Investigation on Art Therapy-Oriented New Regional Social Movements Deriving from Cultural Psychiatry Applied for Hybrid Socio-Cultural Local Contexts
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18K01197
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮坂 敬造 慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (40135645)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地域に入り込む芸術療法 / ハイブリッド文化社会集団過程の葛藤と再統合 / 先進国以外で展開する文化精神医学 / 文化精神医学的芸術療法概念の変容 / 文化医療人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は新型感染症拡大状況が結局改善されなかったため外国出張を控える結果となった。この理由により現地調査計画が実施できなかった不足点が生じたが、文献調査、研究協力者とのメールでの質問意見交換(マッギル大学L.カーマイヤー教授、同J・グズナー医博、ブラジル・サンパウロ等で病院入院・および外来患者と近隣の住民との共同の演劇祭を開催し現在はポピュラー大学所属のV.ポルデウス医博)、カナダ・マッギル大学文化精神医学・文化人類学等の主催研究セミナー講演で本研究にも繋がるコロキュアムへのZoom参加、そこから新に設けた分析視角からの分析枠組みの部分的拡大の検討を行った。 ジャマイカで地域社会への芸術療法展開者の故F.W.ヒックリング医博が関わった事例・心理歴史誌的文化療法 PCT の現地短期調査を参照し、同地のハイブリッド社会文化状況の背景、アート制作作業を行う集団療法的集会参加者関係者の社会層の幅、そして、心的心象的中心に収束関係する象徴表現を伴う集団過程の特色、その過程がジャマイカにおける黒人系の集合的歴史的記憶の共有・確認・構成の過程として実施されていく特徴の、確認・検出・整理を実施。近代精神医学の枠組みで述べられる言説部分の根底には、抑圧の逆境に耐えた黒人系の歴史的記憶、ラスタファリ宗教運動の影響の刻印が認められた。 追加分析視角は、文化精神医学と心理学的人類学で検討してきた芸術療法において、治療的効果の次元と芸術性ないしアート性の次元が相乗的にはたらく場合と、相互背反的にはたらく局面が絡みあっている様相を理論的そして事例的に、更には、第三世界の状況にからむ文化混交次元とのかねあいで分析把握する、という分析視角である。この論点の一部については、カナダ・トロント大学芸術心理学研究者のG.カップチック教授とメール討論をおこなって分析視角を練る機会をえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度中は、新型コロナ感染拡大状況が改善されなかったため、外国出張を控えざるをえず、実施すべき現地調査で未実行の部分が残ったので、この部分については予定した調査結果がえられていない。とはいえ、研究協力者とのメール・ズーム等の連絡を通じて、不足部分の一部を補い、また、新しい分析角度をもうけて追加文献を加え、広い枠組みで研究を再統合してより実りある方向性を見いだすことにより、補う見通しができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の延長申請認可により、今年度は昨年度実施できなかった現地調査を今後おこなう。また、最終年度としての研究報告書、論文の作成をおこなう。
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Causes of Carryover |
2022(令和4)年度中は、新型コロナ感染状況の改善がみられず、海外出張調査はできない結果となり、国内出張も困難な住協で推移したため、最終年度となっていた同年中の研究計画で予算を要する部分未実施であった。 次年度は、とくに未実施であった海外短期調査研究計画部分を残された予算枠の範囲で実施する。9月~10月にカナダ・モントリオールのマッギル大学文化精神医学および文化人類学関係機関での調査とモントリオールでの心理歴史誌的文化療法 PCTを含む芸術療法実施例の調査、さらに予算枠の可能な範囲でジャマイカの追加調査をおこなう。さらに、ブラジルでの調査が予算枠および現地事情適合日程で可能かどうかを検討する(可能でない場合は、次善策としてV.ポルデウス医博の北米訪問滞在日程にあわせて対面での研究討論をおこなう)。 最終年度の研究報告と論文執筆をおこない、それにかかわる予算を執行する。
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