2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒマラヤ地域における所有-社会的制御能の系譜学的研究
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18K01200
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
橘 健一 立命館大学, 政策科学部, 非常勤講師 (30401425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 和之 阪南大学, 国際観光学部, 准教授 (40469185)
山本 達也 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70598656)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 所有 / 制御能 / 機械 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度はまず理論的整理を進め、吉田民人『主体性と所有構造の理論』における「社会的制御能」とドゥルーズ=ガタリの「機械」概念を比較検討し、さらに國分功一郎の「中動態」の議論と松村圭一郎の所有に関わる複合的「おそれ」の接続可能性について検討した。また、エマニュエル・トッドの家族研究で、人口・家族構造と相続のあり方と国家イデオロギーのあいだの相関が指摘されていることを取り上げ、ネパールの税制の変化と人口、家族と相続との関わりについて討議した。 ネパールのフィールドワークでは、先住民チェパン社会の狩猟に関わる所有の問題、ラナ専制時代のチェパン社会内部の徴税の地域的な差異を調査した。また、パルバテヒンドゥー社会においてownerを示す言葉swaamiが、女性にとっての夫(主人)をも意味すること(ヒンディー語も同様)や親族内における男性中心の地位や所有のあり方を確認した。また、結婚した女性の持参金の一部が、女性の個人財産pewaとして認められていること、その制度がネパールの山地のヒンドゥー教徒高位カーストからチェパンやグルンなど山地の先住民まで広く共通してみられること、ヒンディー語にはpewaの概念が見られないことを確認した。また、近年の女性に相続を認める法改正、女性の海外出稼ぎが男性中心の所有のあり方にどのような影響を与えているか検討を始めた。さらに、山岳観光と移牧を巡る共同所有の問題、チベット難民歌手によるコピーライト言説や消費者の対応についても調査を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネパール先住民チェパン社会における狩猟採集や農業に関わる所有の調査、グルン社会における移牧や観光などに関わる所有の調査、ならびにチベット難民社会における芸能に関する調査は、おおむね順調に進んでいるが、調査期間が若干不足している。また、文献調査や理論的検討も進んでいるが、今後はさらに調査研究の焦点を絞っていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究代表者、分担者ともに年に一度の海外フィールドワークを基本とし、調査研究を進めていく。現在はネパール先住民チェパン社会、グルン社会、ラダックのチベット難民社会を対象としているが、状況によりチェパン社会に言語文化的に近い関係にあるタミ社会などの周辺民族やインドやパキスタン、バングラデシュのヒマーラヤ地域での調査研究も検討する。また、研究代表、分担者の調査地を相互に巡検し、意見交換する可能性も探りたい。理論的には、土地や生産物など具体的なモノの所有と抽象的な「真理」や「明晰さ」などの所有という問題をどのように統合できるか、当面追求する。
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Causes of Carryover |
今年度は、日程の都合が着かず、海外出張の期間が短くなってしまったため。
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Research Products
(20 results)