2018 Fiscal Year Research-status Report
The Normative Foundations of the External Legitimacy of Liberal States
Project/Area Number |
18K01207
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
郭 舜 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (30431802)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リベラルな国家 / 対外的正統性 / 国家の構成員資格 / 国家の境界線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究計画の初年度にあたり、その目的である〈リベラルな国家の対外的正統性の規範的基礎〉の解明を進めるための基礎的な作業を行った。まず、国家ないし政府の対内的正統性の根拠として一般に論じられる契約、公正、自然的義務、関係的責務のそれぞれについて改めて検討を加えた。契約や関係的責務はそれに基づく関係性の樹立を規範的に根拠づける高次の普遍主義的原理を必要とし、また公正や自然的義務はそれ自体普遍主義的な原理であり、いずれも対外的な正統性の根拠としては不完全であることが確認された。
この点を補うものとしては、Robert Goodinの割当責任論がある。道徳的義務のより効果的な履行のためには、一人の個人が地球上のすべての個人に対して責任を負う制度ではなく、ある限定した範囲の個人に対して優先的に責任を負う制度の方が望ましい。これは、一定の補充的義務を果たすことを条件に、任意の境界線内部で相互に優先的な関係性を構築することを正当化する議論である。また、民主主義原理に基づく構成員資格の範囲確定に関する議論を検討した。民主的決定が自律の観念に立脚していることから決定の影響範囲によって参加資格を確定しようとする考え方が有力である。これらのことは、リベラルな国家の構成員資格に重層性が求められることを示唆している。
他方、社会内部に生じうる「外部」について検討するため、アパルトヘイト体制下の南アフリカの状況を取り上げるDavid DyzenhausのHard Cases in Wicked Legal Systemsを参照しつつ、リベラルな法の根本にある原理としての法の一般性や平等が社会構成員の「外部」化を承認しえないことを確認した。これは、構成員資格の重層化を否定する論拠となりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究計画の初年度にあたり、その目的である〈リベラルな国家の対外的正統性の規範的基礎〉の解明を進めるための基礎的な作業を行うことを予定していたが、当初の予定通り現在までの議論状況を概観的に確認することができたため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
リベラルな国家が対外的な正統性を承認されるためには、その条件の一つとして一定の範囲の個人に構成員資格を付与すべきことが明らかとなりつつあるが、その際、民主主義的原理に基づけばそれは決定内容に応じて重層化される必要があり、法の支配の理念からは重層化が否定されるという二律背反をいかにして解決するかが今後の課題である。引き続き先行業績の分析検討を行い、口頭発表や関連分野の研究者との意見交換を通じて考察を深める。
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Causes of Carryover |
研究打ち合わせのための出張を予定していたが、翌年度に延期したため次年度使用額が生じた。次年度の旅費として用いることを予定している。
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Research Products
(2 results)