2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01208
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 哲志 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (50401013)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 財団 / 法人 / 死者 / 代表 / 遺言 |
Outline of Annual Research Achievements |
感染症の状況により、予定していた調査・成果報告のためのフランス出張を断念した。そのため、最終取りまとめに至っておらず、延長を申請した。 今年度の成果としては、《目的① 財団理解の歴史的系譜の探求》につき、相続法上の人格承継原理を死者論として提示した雑誌論文「死者の生かし方――フランス相続法における人格承継原理の射程」がある。(昨年度実績報告書でも示唆していたように)ドゥモーグの法主体論=法人論として構想されていたものであるが、緊急事態宣言下での執筆となり必要な文献へのアクセスが叶わったことから方針を転換し、法格言「死者は生者をとらえる(Le mort saisit le vif)」を題材とした。これにより、かえって基層的な問題に迫ることができた。とりわけ、法人論との接点としてrepresentationの観念を再把握しえたことが大きい。上記法格言は「相続人は死者をrepresenterする」と敷衍される。これは、機関がrepresentantとして立つことにより実在せざる法的人格が姿を現すことと相似的である。この視点を本研究の端緒であるサレイユの教会論・法人論に投げ返すことで、本研究は完成をみることになろう。そのための重要な史料が、サレイユ亡き後の比較立法協会での議論であるが、その議事録を参照しえていない。この点が期間延長の最大の理由である。 《目的② 財団の現代的利用形態の解明》については、依然として成果を公表しえていない。しかし、他課題の枠内で扱っている「慈善目的贈与を勧奨するための遺留分批判」という課題からフィードバックが得られている。相続法制を見直すために財団法制の現代化を図るという興味深い展開がみられ、これを主題化する論考を準備している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のとおり成果を還元しえている。しかし、重要な史料へのアクセスが得られていない。他課題のための渡仏時に本研究費を活用して収集を試みたが、所蔵館から許可が得られなかった。両要素を総合して「やや遅れている」との評価を付した。
|
Strategy for Future Research Activity |
認めていただいた1年の延長期間を活用して最終成果につなげる。状況の好転が前提となるが、既に打診のあったフランスでの集中講義の機会に残額を滞在費に充て、文献収集に努める。加えて、国内・海外・オンラインを問わず、成果報告の場を確保する。
|
Causes of Carryover |
年度末に調査・報告のためのフランス出張を予定していたが、現地での感染状況に鑑みてキャンセルしたことによる。その一部は文献購入等に使用した。招聘による渡仏の機会に日程を延長することとし、残額はその滞在費に充てる予定である。感染症の状況により出張が困難である場合は、資料取り寄せや校閲費用に充てて取りまとめに活用する。
|