2020 Fiscal Year Annual Research Report
Toward a Construction of Normative Theory of Immigrants' Social Inclusion
Project/Area Number |
18K01210
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
横濱 竜也 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (90552266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 功一 東京都立大学, 法学政治学研究科, 教授 (00404947)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 移民正義論 / ナショナリズム / 多文化主義 / 社会的排除 / 立憲主義 / 公私区分 / 宗教調和政策 / 世界正義論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究最終年度となる令和2(2020)年度は、新型コロナウイルス感染症流行により、シンガポールでの再調査、国内の外国人集住地域での調査は、調整の不調により断念せざるをえなかった。そのなかで、研究成果の公表にウエイトを置いて活動した。 研究代表者は、入管協会発行『国際人流』連載論文にて、平成30(2018)年度末のシンガポール在外研究と、その後の移民の社会的包摂の規範理論研究の成果を示した。本論文では、第一に、シンガポールの外国人労働者受入れ制度の下において、半熟練外国人労働者・外国人家事労働者が労働力需要を充たす一時的労働者として扱われ、十分な権利保障を受けず社会的にも排除されている点を指摘した。他方、同制度が社会統合の範囲を限定する機能を果たしていることも明らかになった。 第二に、シンガポールの社会統合政策、とくに宗教調和政策と多人種主義についても批判的検討を行った。人種と宗教が密接に結びつく同国において、政府が積極的に介入して多人種・多宗教の調和を実現する仕組みとして、計画的に多人種混住を実現する団地政策や、宗教調和維持法や国内治安法による自由の制限などが活用されている。このような調和の強制には、人権保障の観点から疑義が呈されうるものの、同時に他国の宗教制度との比較検討と、移民の社会統合の観点から宗教規制の正当化根拠を示す理論構築が必要となることも明らかとなった。この知見に基づき、望ましい宗教規制のあり方の解明に力点を置いた新たな研究プロジェクトを立ち上げることになった。 昨年来の新型コロナウイルス感染症禍は、各国における社会的排除、また社会統合の不全をあぶり出すものでもある。研究分担者は、コロナ下における人々の孤立や隔離、人々が対面で集う場を維持することの重要性、パンデミック対応とその失敗に関する国際関係論からの示唆について、雑誌論文やウェブ記事で明らかにした。
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