2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on constitutional adjudication under the authoritarian regime in Russia
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18K01212
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 史人 名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 教授 (50350418)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 憲法裁判所 / ロシア法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018度は、ロシアにおける憲法裁判の活性化の現況を跡づけるべく、4つの主たる研究対象のうち、②個別の裁判を通じたロシア司法制度改革の方向付け(監督審改革など)および④ヨーロッパ人権裁判所に対するロシアの「国家主権」の擁護、の2点を中心に研究を進めた。 ②については、ロシア民事監督審の制度改革の「停滞」を、実体的真実主義の影響という社会主義期からの「惰性」によって説明する従来の法文化論的な手法ではなく、政治部門の利害という観点から分析するとともに、その中での憲法裁判所の積極主義についても検討し、その成果を比較法学会において報告した。 ④については、ヨーロッパ人権裁判所とロシア憲法裁判所の関係に関わる近年の動向の概要を小畑郁ほか編『ヨーロッパ人権裁判所の判例Ⅱ』(信山社)にまとめ、2015年以降にロシア憲法裁判所に付与されたヨーロッパ人権裁判所判決に対する審査手続及びその運用実態を明らかにした。また、ヨーロッパ人権裁判所やEU裁判所などの国際司法機関との関係で、ロシアやハンガリーなどの東中欧で近年頻繁に論じられるようになった「憲法アイデンティティ」概念に関する検討を進め、当該概念がエトノス的な主権者像と接合して援用されることが多い一方で、リベラルデモクラシーを擁護する陣営も、当該概念を用いて積極的に議論を展開していることを明らかにした。その成果は、2019年3月にモンゴル国立大学において開催されたシンポジウムにおいて報告した。 また、ロシア憲法裁判の動向を「司法ポピュリズム」という道具立てを用いて分析すべく、近年のポピュリズムをめぐる議論を政治学を中心にフォローした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進度はほぼ予定通りであるが、資料の収集状況から、2年目に予定していた研究を、主として初年度に行うこととなった。その結果、憲法裁判所とヨーロッパ人権裁判所の相互関係、憲法裁判所の解釈手法に関する分析では一定の成果を得ることができたが、研究方法・論点の整理については、ポピュリズム概念及び同概念を適用したロシア・東欧圏の分析を進めたものの、完遂には至らなかった。現地調査については、昨年度は、モスクワ大学法学部、ロシア連邦憲法裁判所、サンクトペテルブルク大学法学部を訪れインタビュー、資料収集を行ったほか、国際法学フォーラムに出席した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に十分な検討を進めることのできなかった憲法裁判所の「決定」に関する分析を進める。そのため、ロシアにおける当該分野の第一人者であるペトロフ教授が所属するイルクーツク大学への調査旅行を実施する。また、研究方法・論点の整理を継続するとともに、ポピュリズムと司法の相互作用に関する検討を深めるため、ハンガリーを訪れ、現地の憲法学者とのワークショップ、ハンガリー憲法裁判所における情報収集などを行う。
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Research Products
(4 results)