2018 Fiscal Year Research-status Report
The Possibility of the Community-promoting Environmental Approach to Crime Prevention
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18K01213
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松尾 陽 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (80551481)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 犯罪に強い社会の実現のための行動計画 / セレンディピティ / ガバナンス / AI / 代替性 / 合成性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、これからの研究体制・研究課題の地固めを行う年度であった。 環境的アプローチを整理するべく、2018年6月に慶応義塾大学の「市民生活の自由」研究会にて、「犯罪への環境的アプローチの意義とその多様性:「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」を素材として」という研究報告を行った。日本の政策を検討しつつ、環境的アプローチの意義をまとめる報告であった。参加者に政策関係者の方々がおられ、彼らから貴重なコメントをいただき、今後の研究の方向性に大きな示唆をいただいた。 研究体制を整えるべく、法哲学の基本的書物をはじめとして、犯罪学および都市論の書物をいくつか揃えることができた。「犯罪への共同体再生型環境的アプローチ」の最たる例は都市の再生であり、都市論の検討は必須である。社会を支える環境の在り方(都市の構造・インターネット空間のアーキテクチャ)を考察するサンスティーン『♯リパブリック』の書評を執筆し、「セレンディピティのアーキテクチャをいかにデザインするのか:自由と民主政の未来」(図書新聞3384号)を公刊した。 日本法哲学会で「グローバル・ガバナンスにおける多元的な秩序形成の在り方とその意義」という研究報告を行い、多様なアクターが多様な場で秩序形成をしていく営みの分析を試みた。 当初の計画と異なったのは、AI議論の急速な展開である。コンビニにおける予測的ポリシングにみられるように、犯罪予防のためのビッグデータの解析にAIが用いられつつあり、「犯罪への共同体再生型環境アプローチ」の具体化がAIにより支えられるようになっている。そこで、AIなどを扱った研究会やシンポジウムに積極的に参加した。犯罪予防の話にまでは及んでいないが、しかし、ガバナンス論の観点からAIの問題にアプローチする「AIガバナンスの法哲学」(法律時報2019年4月号)を公刊することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究報告二本、書評一本、論文一本(ただし、論文の公刊日は2019年4月1日付)を公刊することができた(日本法哲学会における研究報告を論文としたものは、2019年秋に公刊予定である)。 研究計画には、AIの話を含めていなかった。しかし、AIの急速な発展により、研究計画を変更・拡大せざるを得なかった。そこで、ロボット研究者・生物学者らと研究交流をし、さまざまな研究会やシンポジウムに参加することで議論の急速な発展にキャッチアップすることに努めることもでき、どのようにアプローチしていくのかの研究視点を設定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、技術的・建築的環境(アーキテクチャと呼ばれる)を変えることによって犯罪を予防するアプローチ(環境的アプローチと呼ばれる)を研究することを主眼としている。 2018年度の研究遂行中、イタリアのカリアリ大学の法哲学者Giuseppe Lorini先生の研究に接し、また、電子メールで意見交換を行った。彼の研究は、(そのような表現を用いていないが)環境的アプローチを主題とし、とりわけ、本研究計画が掲げた独自性の2点((ⅰ)規範意識へのアーキテクチャの影響、(ⅱ)法概念論への新しい視角の提供)に密接に関係する。そこで、2019年度中にLorini先生のもとを訪問し、意見交換をしたいと考えている。 次に、本研究に密接に関連するAIの問題に本研究との関連する形で一層取り組んでいく。理論的には、アーキテクチャによる規制と比較する形で、アルゴリズム的規制の問題を精力的に研究する、Birmingham大学のKaren Yeung教授が、現在進行形で論文を多く、公刊している(たとえば、2018年にRegulation & Governance 誌に論文「Algorithmic Regulation」を公表)。彼女の研究はAIと環境的アプローチとをつなぐ重要な研究であり、この研究もキャッチアップしていきたい。 また、日本のロボット研究者・自動運転車の研究者とのAIの問題を研究していく(2019年9月はじめにロボット学会のシンポジウムに登壇する予定)。また、インドの生物学者Binoy V.V(インドのBengaluruにある国際高等研究所所属)が主導するAI関連の学際研究に参画する予定である(さまざまな国からさまざまな分野の研究者が6人ほど集まり、2018年度より企画)。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は3689円である。年度末の出張旅費が予想より、かからなかったためである。 次年度には、出張旅費の枠内で使用していく予定である。
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Research Products
(4 results)