2021 Fiscal Year Research-status Report
The Possibility of the Community-promoting Environmental Approach to Crime Prevention
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18K01213
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松尾 陽 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (80551481)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アーキテクチャによる規制 / 社会規範 / コロナ / 専門家の役割・責任 / 規制の多様化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、犯罪への環境的アプローチの可能性と限界を探ることである。昨年度と今年度、コロナ禍が進行する中で、環境的アプローチによって人びとの行動を制御しようとするコロナ対策が見られた。これらの対策は、犯罪対策というわけではないが、しかし、本研究の課題にとって非常に有用な示唆を与えてくれる。 そこで、今年度も、本研究課題へ「アーキテクチャによる規制」がコロナ禍でどのように実施されているのかという問題を考察した。このアーキテクチャによる規制の研究は、法規制や他の規制との比較が必須である。まず、今年度は、規制の多様性が理論的にどのような意味を有するのかという問題に取り組んだ(業績「規制手法の多様化と法哲学の課題」)。次に、新型コロナ禍においてどのように多様な規制が活用されているのか、また、とりわけ、新型コロナ禍で社会規範が大いに活用されたことから、他の規制と比較しつつ、社会規範の活用の意義と限界についても考察した(業績「アーキテクチャ論から新型コロナ禍の対応を考える」)。さらに、多様な規制を活用するためには、専門的で局所的な知識を活用することが必須であり、もっといえば、専門家をどのように登用するのかが重要な問題となり、問題の一端を分析した(業績「統治過程における専門家の役割と責任――専門家リテラシーの問題も併せて」)。 このように今年度は、各テーマと業績が緊密に結びつけて公表できる年度となった。今後の課題は、この成果をもとに、アーキテクチャによる規制が、他の規制とどのように緊密に結びつき、また、どのようにバッティングするのかを考察しつつ、共同体の再生という問題へと結びつけていくのかが課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究業績を公表するという点においては、本研究課題は、当初の計画以上に進んでいるといえる。当初公表予定として念頭になかったさまざまな媒体に公表する機会を頂き、研究成果を公表する機会を得たからである。 また、コロナ禍でオンラインセミナーなどが増えることで、海外の研究報告に接する機会が増え、その意味でも当初の計画以上に進んでいるといえる。 しかし、海外に直接渡航し、海外研究者と直接交流し、知見を広げて研究へとフィードバックするという観点からは、本研究は、やや遅れていると評価できる。確かに、メールのやり取りなどで、海外研究者との交流を行っている部分もあるが、しかし、直に交流することによる知見の交換ができているとは言い難い。 以上から、本研究課題全体でいえば、計画以上に進んでいる側面とやや遅れている側面があり、間をとって「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題に非常に関係する問題として2021年にEUが「AI規制法案」を作成した。これは、AIをどのように活用していくのか、また、どのような目的で利用してはいけないのかを示したものである。AIをどのように活用するのかは、アーキテクチャによる規制をどのように活用するのかという問題に非常に深くかかわってくる。 残りの研究期間でこの法案を総合的に評価する期間は十分にあるとは言い難い。そこで、とりわけ、監視技術(もっといえば、生体認証技術)の側面に焦点をあてて研究する。6月には愛知法理学研究会で、7月には基礎法学シンポジウムで、「監視と自由」について報告する予定である。そして、この成果は、法律雑誌で公表する予定である。 この研究課題の目的には、海外研究者との交流もあった。相手国を訪れて交流することには困難が予想される。そこで、依然として、オンラインセミナーに出席し、また、メールでのやりとりを通じて、研究交流を図ることを継続する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で国内出張・国外出張の機会がともに激減したことによる。年間を通じて、対面での研究会の数はゼロに等しくなったことに加えて、仮に対面での研究会があったとしても、所属する大学組織としても、不要不急の県外への外出を制限する規制を実施し、出張することが難しくなった。
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Research Products
(5 results)