2022 Fiscal Year Research-status Report
戦間・戦後改革期の裁判官制度の比較法史研究--キャリアシステムと職権の独立
Project/Area Number |
18K01215
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三阪 佳弘 大阪大学, 大学院高等司法研究科, 教授 (30219612)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 裁判官 / キャリアシステム / 戦後司法改革 / 最高裁判所 / 裁判官統制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①戦間期、1920-30年代の政府・司法省主導の裁判官キャリアシステムの構築に伴って、日本とフランスそれぞれ裁判官の職権の独立の実態がどのようなものであったのか、そして、②戦後改革期に、そのような実態に対する総括がどのように行われたのか、あるいは、当該裁判官キャリアシステムに対する、司法権以外の多元的な機関による「法的統制」の可否ないしは有効性がどのように論議されたのか、その制度化はどの程度まで行われたのか、③①②を総括しつつ、そこにどのような日仏の差異と共通性があったのか、を順次検討するものである。 令和4年度については、上記①②③の全体像を総括するための作業を行った。日本に関しては、戦後改革期の司法省組織改革と憲法制定過程における現在の司法権規定の制定に関わって、裁判官任用制度の問題について当時の政府がどのように検討していたのかについて分析を行った。研究をまとめるに当たって、公刊されている憲法制定関係資料と我妻栄文書に残された関係資料を中心に分析を行った。次に、フランスについては、1958年のフランス司法制度改革の意義を考えるためには、昭和戦前期の日本の司法制度改革の際に参照されたと考えられる1906年制定のサリアンデクレの歴史的意義について理解が不十分であったことに気づき、それについての先行研究の検討を行った。 本年度に総括を論文として発表する予定であったが、当初計画が予定していた検討対象の大きさゆえに研究が遅れた。そのため当初計画より対象期間を短縮し、日本については戦後改革期に、フランスについては、ヴィシー政権下の戦時期を除いた、1958年司法制度改革の前提となる20世紀初頭(1900~20年代)に絞って研究成果をまとめることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、研究期間前半に生じた社会情勢の緊迫が継続したことにより、国会図書館・国立公文書館での戦後改革期の司法制度に関わっていた政治家の所蔵関係資料、立法資料の集中調査が十分に進まず。そのことの影響による全体的な計画の遅れを、後半においても取り戻す事ができなかったためである。つぎに、研究を進めるにつれて、当初計画が予定していた時期が広すぎたことが明らかになり、研究総括がなかなかまとめられないという状況に陥ったためである。 そこで日本については戦後改革期に絞って資料・研究文献の検討を行い、フランスについては、1930年代のいわゆるヴィシー政権下での戦時例外的司法状況を検討対象から外し、1958年司法制度改革の直接的な歴史的前提となる20世紀初頭(1900~20年代)の司法制度改革に絞って検討を行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度については、研究計画の遅れを取り戻すために、日本については戦後改革期に絞って資料・研究文献の検討を行い、フランスについては、1930年代のいわゆるヴィシー政権下での戦時例外的司法状況を検討対象から外し、1958年司法制度改革の直接的な歴史的前提となる20世紀初頭(1900~20年代)の司法制度改革に絞って検討を行った。戦後改革期の日仏の両改革について、いずれも、戦前の司法制度改革論議(日本については大正末から昭和初期、フランスについては1900-20年代)との関係でその意義をまとめる準備ができたので、最終年度はこれらについての研究成果のまとめを公刊する作業に注力する。
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Causes of Carryover |
令和2~3年度の社会情勢の緊迫により、当初予定していた海外調査および国内資料館の資料調査が思うようにできず、その分の旅費や複写料を予定通り費消することができないまま、研究期間を徒過した。そのために生じた予算未消化が、そのまま引き継がれ、次年度使用額を生じることとなった。令和4年度でも、残り研究期間との関係から、資料は郵送による複写取り寄せや文献調査に比重を移したため、旅費等に余剰を生じた。最終年度については、研究の総括の過程で必要となる文献・資料の購入により令和5年度使用額を費消する予定である。
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