2020 Fiscal Year Research-status Report
"Slave labour" and locatio conductio in Ancient Rome
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18K01219
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
五十君 麻里子 九州大学, 法学研究院, 教授 (30284384)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ローマ法 / 解放奴隷 / 奴隷労働 / locatio conductio / 扶養 |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID-19の世界的感染拡大により、当初予定していた海外での学会報告・研究打ち合わせ・資料収集などが、すべて中止または延期となり、研究方法の変更を余儀なくされた。 そのような状況下でも、解放奴隷に関する研究は順調に進展し、とりわけ、「古代ローマにおける扶養に関する和解をめぐる手続きについてーマルクス・アウレリウス帝演説に基づく公的介入ー」(『法政研究』87-3 )としてその成果の一部を公開することができた。元主人が解放奴隷の扶養を相続人や受遺者に遺言で託す事例が多くみられることについて、昨年度「古代ローマにおける解放奴隷の扶養に関する一考察ーQ.C.スカエウォラ法文学説彙纂34巻1章16法文1項を手掛かりにー」(『法政研究』86-3)で示したが、その扶養を負担する相続人ら扶養義務者と、解放奴隷を含む扶養権利者の間で、扶養内容を変更する合意(法文上は「和解」と表現)に厳しく制限を設けるよう、マルクス・アウレリウス帝が定めた。その手続は非常に詳細で充実しており、手続の射程を広くとって取りこぼしを防ぐとともに、手続自体においては「扶養内容の変更が必要な理由」「変更後の内容」「扶養義務者・扶養権利者の人物」の全てを調査すべきものとされ、さらに手続を経ずに当事者間で事実上の変更が行われた場合の対応についてまで規定されていた。このことは、ローマの社会にとって解放奴隷の扶養がいかに重要であったかを物語る。 これらの研究によって得られた知見について、雑誌”Impact”にインタビュー記事が掲載された。https://www.ingentaconnect.com/content/sil/impact/2020/00002020/00000009/art00025
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は9月にヨーロッパ、1月にサンチャゴ(チリ)にて学会に出席し、意見交換や資料収集を行う予定であった。しかしながら、これが不可能となったため、この点で当初予定していた研究は遅れていると言わざるを得ない。 他方想定外に、"Impact"の紙媒体とネット上で、英語で研究内容を発表する機会を得、奴隷・解放奴隷についての新たな見方を提示することができた。この点では、計画以上に進展していると言ってよい。 これらを総合すると、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は、古代ローマの解放奴隷に対する従来の見方に根本的な見直しを迫るものである可能性が出てきた。もし状況が許せば、このことを海外の研究者に披歴し議論する機会を得たいが、そうでなくとも、より広いオディエンスが期待できる、英語によるウェブ公開を充実させたい。 他方、ヘラクラネウム文書の「ユスタ訴訟」は従来、ユスタが生来自由人であることの確認を求めた訴訟と理解されてきたが、ユスタは解放奴隷として扶養を受ける権利を主張したところ、扶養義務者が同女を生来自由人であると主張した訴訟である可能性もあるため、本研究のまとめとしてこの文書の検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
COVID-19の世界的感染拡大の結果、旅費の支出がゼロとなったため。 次年度は主にウェブ雑誌への投稿料として、支出の予定。
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Remarks |
web雑誌impactの記事
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