2021 Fiscal Year Annual Research Report
"Slave labour" and locatio conductio in Ancient Rome
Project/Area Number |
18K01219
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
五十君 麻里子 九州大学, 法学研究院, 教授 (30284384)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 解放奴隷 / 扶養 / 古典期ローマ法 / familia / 社会保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
ローマ法における賃約(locatio conductio)は、現行法では雇用などを含む諾成契約であり、現代の雇用・労働契約の起源であると言える。しかしこれに加え、古代ローマにおいて労働力供給システムとして重要な役割を果たしていたのは、奴隷制度であった。現代の「奴隷労働」とは過酷な労働環境を指す言葉であるが、ローマの奴隷は衣食住を主人に依存し生存を確保できた点で、locatio conductioの雇用による自由人労働者よりもむしろ良好であったともいえる。さらに奴隷は解放された後も解放奴隷として主人のもとに止まり、元主人から生活を保障されていたことを、前年までの研究で明らかにした。 そこで、古代ローマにおける解放奴隷の地位、元主人との関係、生活等を分析し、近時の我国における「同一労働同一賃金」、長時間労働といった労働問題に加え、ひとり親家庭の貧困や虐待といった社会問題までも視野に入れつつ、比較を試み、英語にて本研究成果をオンライン出版し、従来の虐げられた奴隷・解放奴隷とはことなり、familiaが現代の社会保障に代わる機能を有していたことを示した。 さらには、この成果をもって、1940年代から議論の続く、ヘラクラネウム出土の蝋板文書から復元された「ユスタ事件」について従来の見方を一変する見解を提示することができ、2021年度採択の研究へと発展させている。 COVID-19の世界的流行のため、引き続き海外渡航がかなわず、海外のローマ法研究者との意見交換、海外主要大学での史料収集、国際学会における研究発表などは実現できなかったが、COVID-19後へと繋がる研究成果を得ることができた。
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