2018 Fiscal Year Research-status Report
熟議民主主義において公正な結論を導く〈法的思考〉形成の研究
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18K01222
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
菅原 寧格 北海学園大学, 法学部, 教授 (20431299)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 熟議民主主義 / 法的思考 / 法の妥当根拠 / コミュニケーション / 権利 / 法思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の前半は文献研究を通じて本研究全体の理論的基礎を固めつつ、そうした文献研究から得られた知見について、後半に開催された国際学会等の機会を利用し、積極的に口頭発表を行うことで、その有効性と射程を確認するよう努めた。具体的には、①「法の妥当根拠論再考」(北大法理論研究会、10月27日)、②「法の妥当根拠とその現代的局面」(日台法学研究シンポジウム、11月30日)、③「東アジア法哲学における共通の基盤」(東アジア法哲学会、12月13日)、④「法意識論・法的コミュニケーション論の再編に向けて―郭薇『法・情報・公共空間』(日本評論社、2017)を読む―」(北大法理論研究会、12月23日)、⑤「法学教育における国際法・外国法・外国語授業の状況―李明峻報告へのコメント―」(日台法学研究シンポジウム、1月12日)といった機会がそれに充てられ、多くの参加者との間で有益な意見交換と研究交流を行った。 これら今年度後半に行った口頭発表はいずれも熟議民主主義を支える基盤であると同時に、〈法的思考〉が作用を及ぼす実践であるところの「コミュニケーション」という営為に着目し展開されたものとして位置づけられる。とりわけ、伝統的な法哲学的問題である法の妥当根拠論との関係から「コミュニケーション」を見直すことによって、本研究がテーマとする〈法的思考〉の現代的意義について一定の筋道を見出すことができた。 次年度以降はこれら得られた成果を論文として整理し発表するとともに、研究の最終年度に向けて熟議当事者が討論を行う際の指針となり得るような〈法的思考〉へといっそう彫琢していくことが目標である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究初年度として研究全体の理論的土台を整備することが最大の目標であったが、年度の前半で主に資料収集と文献講読を行いつつ、後半では当初の予定を超えたそれぞれに内容の異なる五本の口頭報告を行うことができたことにより、当初の目標はほぼ整えることができたと考えている。 もっとも、これら国際学会などで行った口頭発表の成果を論文として公刊することについては、既に一部が翻訳され掲載が確定しているものや脱稿しているものがある一方で、次年度の早い段階での発表がなされるべき課題としても残されている。とはいえ、研究全体として振り返ってみた場合、ほぼ想定していた通りのペースで進捗してきたといえるし、二年目にあたる次年度と最終年度に向けた研究方針についても、大きな修正や変更をすべき事情が生じているわけでもない。 研究初年度の進捗状況として、本研究はその目標をおおむね達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の後半に行った口頭報告の機会を通じて得られた知見は、熟議の基盤になると同時に〈法的思考〉が作用を及ぼす実践である「コミュニケーション」に着目しつつ展開したものとして位置づけられる。とりわけ、伝統的な法哲学的問題である法の妥当根拠論との関係から「コミュニケーション」を見直したことによって、「コミュニケーション」の様相が多面的に動態的に把握されるべきであることが確認された。 研究全体の二年目にあたる次年度では、これら得られた成果をなるべく早い段階で論文として整理し発表していくとともに、文献研究と学会等での口頭発表との双方をバランスよく進め、研究の最終年度に向けて熟議当事者が討論を行う際の指針となり得るような〈法的思考〉へと彫琢していくことが目標となる。ただ、このことは法哲学の分野で蓄積されてきた法的思考に関わる法思想史を含めた先行研究と一線を画し、法的思考そのものに対する従来の視座を批判的に検討していくことでもある。このことは、たとえば本人に帰責し得ないマイノリティや被差別者の権利問題が関わるような、首尾一貫した法的理由に基づく公正な解決が臨まれる現実の具体的問題に対して、〈法的思考〉が持ちうるポテンシャルを検証していくという点では、従来の理論研究と現実の実践的仮題とを架橋することになる。 また、研究を遂行していくために欠かせない関係資料の収集を継続して進めるほか、研究論文としての成果を示すとともに、今年度は所属機関で開催している「法学部カフェ」などの機会を利用して、本研究テーマに対して広く関心を持つ社会一般との間で研究成果の共有を図るとともに、研究の成果を公開し還元する。
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Causes of Carryover |
研究図書のごく一部につき、市場価格よりも安く販売された機会を利用し購入することができたため、次年度に必要な研究図書費へ充当することにした。
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Research Products
(5 results)