2021 Fiscal Year Research-status Report
熟議民主主義において公正な結論を導く〈法的思考〉形成の研究
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18K01222
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
菅原 寧格 北海学園大学, 法学部, 教授 (20431299)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 熟議民主主義 / 法的思考 / 価値相対主義 / 法感情 / コミュニケーション / 法思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
〈法的思考〉の実践として熟議の基盤を成す「コミュニケーション」との関係から、昨年までの熟議民主主義の当事者が討論を行う際の指針となり得る理論を探ってきた。この成果を踏まえ、今年度は、民主主義プロセスにおいて熟議を展開する際に問題になりやすい価値の妥当をめぐる相対主義の問題を再考し、熟議の担い手における〈法感情〉の分析を行った。 具体的な成果は主に4点である。第一に、熟議における価値の妥当をめぐる相対主義の問題に関して、拙著『価値相対主義問題とは何か』(信山社、2022)において採用した執筆方針について(「まえがき」のなかで触れることにより)一定の方向性を打ち出すことができた。第二に、熟議の担い手における〈法感情〉をめぐる問題について、「法と感情」をテーマとした2021年度日本法哲学会において「法感情・承認説・正統性」と題した研究報告を行ったほか、「法感情の諸思想」と題するワークショップを組織し、開催することによって知見を得た。第三に、前述の拙著について東京法哲学研究会による合評会が開催された折に、本研究成果の一部を応答の際に反映させ学会員との意見交換をすることができた。そして、第四に「〈法感情〉の法思想とその可能性」についても考察を深め、愛知法理研究会において報告した。 以上の成果を振り返ってみると、今年度は研究全体の最終年度としてその目標を概ね達成することができたように思われるものの、新型コロナウイルスによる世界規模での感染拡大の予想外の長期化に伴い、研究成果発表の場として考えていた海外で開催予定の研究会や学会をはじめ、対面による国内での会議も相次いで中止や延期を余儀なくされることになった。本研究成果を反省的に捉え返す機会を確保し、精度の高いものとして完成させるためにも研究期間を延長し、これら不足分を補うことによって本研究の意義をよりよく示すことにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は最終年度のため、前年度まで進めてきた本研究全体のまとめとして、熟議民主主義において正しい結論を導く〈法的思考〉の理論基盤に関する研究を行った。だが、昨年に続き予想外に長期化した世界的パンデミックによる影響の下、当初予定していた本研究成果を発表する場面の多くはその予定が立たぬまま延期や中止を余儀なくされたものが少なくない。そのため、昨年度に続き、本年度も研究期間を延長せざるを得ない状況にある。ただ、上述した「研究実績の概要」欄においても示したとおり、大きく三点ほどの研究成果を残すことができたことに照らしてみて、研究全体としてみた場合、その目標は概ね達成することができたともいえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度として研究成果の発表を予定していた学会が、当初の予定から今年度の開催に延期され、またオンラインによる開催になった。このため、対面とは違った形での意見交換が実現したとはいえるものの、当方が見込んでいた対面で行われるような複数の参加者間による同時進行による会が実施される機会は、やはり失われたままであった。そこで、次年度も研究期間を再延長することによって、これまでの研究成果のブラッシュアップに努めるとともに、本研究テーマに関心を持つ社会一般との間においても所属機関が開催する催しの機会などを通じて研究成果の共有を図りつつ、研究の成果を公開し還元していくことにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスによる感染症の拡大が止まず長期化していることから、本研究成果を発表する機会についての制約を受けており、これに伴い次年度使用額が生じている。 そこで、次年度についてもこうした情況が好転しないことを考慮し、本研究と問題関心を共有する研究者に対して当方から研究の成果物を送付することによって、より直接的な意見交換の場を設けることによって本研究をいっそう彫琢する機会とするために、本研究費を用いることにする。
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Research Products
(5 results)