2021 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Analysis of Class Actions in Latin America
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18K01224
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
前田 美千代 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (70388065)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 法とテクノロジー / 民事裁判手続のIT化 / 消費者法 / 個人情報保護法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、集団的利益の保護と実現に関連して、新たに、テクノロジーの発展と法制度の関係から分析を行った。 具体的には、第一に、メキシコのモンテレイ工科大学およびドイツのヴュルツブルク大学とのコラボレーションにて、「法とテクノロジー」を主眼とした研究活動を進めた。第二に、旧来からのブラジル・サンパウロ大学の研究者や現地の実務家弁護士、日本在住のブラジル法研究者らとのコラボレーションにて、2018年に成立したブラジルの個人情報保護法(Lei Geral de Protecao de Dados Pessoais: LGPD)に関する研究を進めた。 第一の研究活動については、2021年10月26~29日にかけて、メキシコ・モンテレイ工科大学にて、「法、テクノロジー及び発展」と題したzoomによるオンライン連続講演会が開催され、10月26日午前9時半~10時半(日本時間午後11時半~午前0時半)に、「日本におけるテクノロジーと消費者集団訴訟並びにその民事的・行政的エンフォースメント」と題した講演をスペイン語で行った。他の講演者は、開催校の研究者の他、ドイツのゲッティンゲン大学やGerman Research Center for Artificial Intelligence (DFKI)の研究者らであった。また、図書の出版が計画されており、これに関連して、2022年3月22日14時半~17時半CET(日本時間22時半~午前1時半)にて、zoomによるオンライン討論会が開催され共著者の一人として登壇した。加えて、La digitalizacion del proceso civil japones: ventajas y desafios(日本の民事訴訟のIT化―利点と挑戦)をスペイン語で執筆し寄稿する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メキシコ・ドイツとのコラボレーションによる共同研究活動に関連しては、ドイツ、メキシコ、アメリカの研究者らとの国際的な学術コミュニティーという本研究課題によって非常に望ましい環境で研究を進めることができ、この点については、当初の計画以上の成果をあげているといえる。その一方で、当初は共著者全員がスペイン語で執筆して一冊の図書として出版し、スペイン語圏で広くPRする計画であったものが、さらに多くの海外研究者の参画により、ドイツ語、英語、スペイン語という3か国語での論文寄稿が許容され、出版計画の変更が生じた。このため、二冊目のChallenges of law and technology(法とテクノロジーのための挑戦)については英語で執筆する予定となった。 ブラジル個人情報保護法の研究については、上記の共同研究に時間をとられ、2021年度中の全訳公表に至らなかったが、全訳自体は終了しており、今後の専門家によるレヴューと、日本の個人情報保護法及びEU一般データ保護規則(GDPR)との比較検討を加えたうえで、今年度中早期の発表を予定したい。
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Strategy for Future Research Activity |
メキシコ・ドイツとのコラボレーションによる共同研究活動に関連しては、Digitalization as a Challenge for Justice and Administration(司法行政の挑戦としてのIT化)がドイツ・ヴュルツブルク大学出版会から、Challenges of law and technology(法とテクノロジーのための挑戦)がメキシコ・モンテレイ工科大学出版会から、それぞれ2022年度中に図書として出版される予定である。前者については、2022年3月22日に開催済みのオンライン討論会に加えて、La digitalizacion del proceso civil japones: ventajas y desafios(日本の民事訴訟のIT化―利点と挑戦)をスペイン語で執筆し寄稿する。後者についても、同様のオンライン討論会が2022年7月22日に予定され登壇が決定している。講演タイトルは、「日本におけるデジタル・プラットフォームと消費者保護」であり、英語の講演を予定している。また、同タイトルの英語論文を寄稿する予定である。 ブラジル個人情報保護法については、2022年度中の共同全訳の発表を予定している。このなかでは、日本の個人情報保護法及びEU一般データ保護規則(GDPR)との比較検討を行うことで翻訳資料としての価値が高まると考えている。
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Causes of Carryover |
2020年3月以降2022年3月までの間に複数回計画されていたラテンアメリカ諸国への渡航が、新型コロナウィルスによる渡航自粛要請のため実現できなくなったことが最大の要因である。特に、この間、ブラジルやアルゼンチンでは感染者急増がたびたび生じ、入国制限も繰り返され、所属大学が要求する水準での海外渡航計画を策定することが困難となった。もともと、滞在期間として約1か月の長期が予定されるとともに、年度毎に渡航が計画されていたものが、連続してキャンセルされたことで、次年度使用額が生じた。渡航により実施が予定されていた研究については、現地の実務家・研究者へのzoomを用いて一部実現できたため、当年度の研究遂行にあたり多大な支障とはならなかった。 次年度使用額による増額分を含めた使用計画としては、第一に、渡航が許容される状態となれば旅費に充てる予定である。第二に、PC等の購入による研究環境整備に充てる予定である。2021年度は、当初の研究計画の範囲内で、研究の幅が広がり、ラテンアメリカ諸国の法研究と関連するヨーロッパや米国の研究者とのコラボレーションを達成した。このことで、本年度は、zoomを用いたオンライン国際学会・国際シンポジウムの実施や参加がすでに複数計画されており、動画編集等のオンライン資料作成ソフトの購入を含め、オンライン研究環境の整備に引き続き重点的に充てたいと考えている。
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