2020 Fiscal Year Research-status Report
勧告的意見(照会制度)の日本への導入可能性と具体的制度設計に関する研究
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18K01233
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 雅寿 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (90215731)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 勧告的意見 / 照会制度 / カナダ憲法 / 違憲審査制度 / 対話理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 カナダの照会制度 2020年度前半は、カナダで照会制度が成功している要因、修正すべき点等を解明する作業を行った。成功の要因としては、(1)照会制度の司法化((a)利害関係のある連邦や州の法務総裁、利害関係者や団体、利害関係を有していてもその利害が代表されていない者がそれぞれの意見を述べる機会の確保、(b)弁護士等による争点の十分な展開、(c)事実問題を含む必要な情報を収集するための手続整備、(d)詳細な理由が示された判断)、(2)裁判官を補佐するロークラークの存在、(3)政治部門を含めた社会全体による裁判所の判断の尊重等があげられる。その反面、カナダ最高裁は、厳密な意味での事実審理手続きを持たないため、下級審における事実審理の必要性も指摘されている。 2 勧告的意見の日本への導入可能性 2020年後半は、憲法上許容され、日本の違憲審査の実態に適合的で、かつ、違憲審査の活性化に役立ち、憲法秩序を実効的に保障しうる勧告的意見の具体的内容を憲法政策の観点から提言するための準備作業を行った。すなわち、カナダの照会制度の分析で得られた知見を、カナダ憲法に特有のものと、より普遍的な原理に基づいたものとを区別し、後者に関して日本への導入可能性を検討する作業である。特に、利害関係を持つ政府や地方公共団体、私人の参加手続を認める根拠と範囲に関しては、「国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律」4条等の既存の法規とその柔軟な適用可能性や、カナダでも用いられている訴訟参加手続や裁判所の友の活用等の可能性を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1 カナダの照会制度 2020年度前半は、カナダで照会制度が成功している要因、修正すべき点等を予定通り解明することができた。 2 勧告的意見の日本への導入可能性 2020年度後半は、憲法上許容され、日本の違憲審査の実態に適合的で、かつ、違憲審査の活性化に役立ち、憲法秩序を実効的に保障しうる勧告的意見の具体的内容を憲法政策の観点から提言するための準備作業を行った。これを踏まえて、東京・大阪へ出張し、憲法の専門家等との議論を通して検討を深める予定であった。しかし、コロナ禍の下、国内出張も制限され、また、専門家との意見交換の場として予定していた日本公法学会も中止となり、勧告的意見の日本への導入可能性に関しては、多角的な観点からの最終的な検討部分が一部不十分となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、すでに解明したカナダで照会制度が成功している要因、改善すべき点、日本に導入可能な要素等を踏まえて、憲法上許容され、日本の違憲審査の実態に適合的で、かつ、違憲審査の活性化に役立ち、憲法秩序を実効的に保障しうる勧告的意見の具体的内容を憲法政策の観点から提言する予定である。この作業も2020年度までにある程度進んでいるが、2021年度は、憲法の専門家との意見交換をしたうえで、具体的提言内容を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度の研究費に関しては、155,736円の残額が生じた。これは、コロナ禍のために国内出張が制限され、専門家との意見交換が十分に行えなかったために発生したものである。この残額は、2021年度に、専門家との意見交換を行うための国内出張のために使用する。
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