2019 Fiscal Year Research-status Report
資源の有限性をめぐる法学的考察――「事業としての行政」法理論の可能性
Project/Area Number |
18K01237
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯島 淳子 東北大学, 法学研究科, 教授 (00372285)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 行政法理論 / 資源 / 事業 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、主として、実証研究、理論研究および比較法研究を進めた。 実証研究は、日常的な社会貢献活動をも通して進めてきた。具体的には、国や地方公共団体の審議会等への参加を通して経験した具体的事例をも取り上げ、現実の立法過程と行政過程から、実証研究と実定法制度の整理・分析を行った。国レベルについては地方制度調査会の審議過程を主たる対象とし、また、地方レベルについては仙台市の次期総合計画の策定過程を主たる対象とした。研究成果については、今後論文等の形で公表していく予定である。 理論研究として、憲法学の議論にも示唆を得ながら、生身の人間同士のコミュニケーションが、資源の有限性の中で持ちうる意味を追究した。具体的には、「議員と住民とのコミュニケーション」というタイトルの下で、議員と住民とのコミュニケーションが、民主政にとってどのような法的意味を持ちうるのかという課題設定の下、地方公共団体における議会改革の実践と国における地方議会・議員の制度改革論について検討し、また、議員の発言をめぐる近時の判例の動向を分析した。 比較法研究として、パリの地位に関する2017年2月28日法律を分析し、強固な中央集権国家であるフランスが、どのように首都法制を再構築しようとしているのかについて、検討を加えた。長い歴史に基づくフランスの試みは、集権と分権という軸に収まりきることなく、資源の制約の下での行政・行政法の変容を示すものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、実証研究と制度分析を行うと同時に、学際的研究や比較法研究にも示唆を得ながら、研究目的の達成を目指すものである。今年度は、予定していた海外調査は、新型コロナウィルスの影響により、断念せざるを得なかったが、主として理論研究と比較法研究に重点を置き、研究業績を公表することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
資源の有限性が、どのように法的言語に翻訳されてきたかという課題設定の下、今年度は特に、効率性の概念について多角的に検討を進める予定である。本研究が着目する効率性の概念については、同時に危険も孕んでいることがしばしば批判される。とりわけ、有限な資源の量から逆算した制度設計は、資源の公正な再配分を損なうことも懸念される。こうしたおそれに対処するためには、個別的法事象を統合するための理論枠組みが必要となる。本研究がキーとする「事業としての行政」という考え方について、いかにして理論・制度・実証的側面において体系化しうるのか、考察を深めたい。
|
Causes of Carryover |
海外調査を予定していたところ、フランスでのデモやストライキの頻発、世界規模での新型肺炎コロナウィルスの影響で、断念せざるを得なかった。今後も海外調査の可能性を探っていくほか、海外の最新文献をできる限り広く入手することに努め、研究を滞りなく遂行していく。
|
Research Products
(4 results)