2018 Fiscal Year Research-status Report
Research on the international progress of anti-tax-avoidance measures and the protection of taxpayers' rights
Project/Area Number |
18K01239
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大野 雅人 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (10619688)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | BEPSプロジェクト / 情報交換 / 納税者の権利保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、OECD/G20による「税源浸食と利益移転に対抗するプロジェクト」、いわゆる「BEPSプロジェクト」により、各国の税制の統一化、各国税務当局の国際的協調、納税者情報についての各国税務当局間の情報交換等が進んでいる一方で、課税強化にともなう納税者の権利侵害が懸念されていることを踏まえ、租税回避対抗策と納税者の権利保護のバランスに関する主要国における議論を参考としつつ、納税者保護のための、我が国の法制の未来像を探ろうとするものである。
準備的な研究として、豪州クイーンズランド工科大学の Kerrie Sadiq 教授らと、各国におけるBEPSプロジェクトの法制化がどのように進展しているかについて共同研究を行い、その成果を、Kerrie Sadiq, et al., ed. Tax Design and Administration in a Post-BEPS Era (Fiscal Publications, 2019) として公刊した。このうち、研究代表者は、「Chapter 8: The Adoptiion of BEPS in Japan」(pp. 146-159)を執筆した。
また、各国税務当局間の情報交換の違法性と損害賠償請求等の関係につき、「判例研究:二国間租税条約に基づく情報交換要請の取消し請求等が認められなかった事例」筑波ロー・ジャーナル24号133頁(2018)、「欧州裁判所Berlioz事件判決の影響―租税条約に基づく情報交換と納税者の権利保護」租税研究828号284頁(2018)を発表した。これらの論文は、OECDモデル租税条約及びそのコメンタリーに照らし、また、比較法的検討も行いつつ、どのような場合に情報交換が違法となり、どのような場合に納税者による損害賠償請求訴訟が可能となるかについて論じたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎的な研究の成果として、各国の法制におけるBEPS報告書の受容状況に関する、Kerrie Sadiq 教授らとの共著書を公刊するとともに、情報交換と納税者の権利保護に関する論文等を公表した(いずれも「研究実績の概要」に記載)。今後は、情報交換に加えて、移転価格税制やタックス・ヘイブン対策税制における納税者の権利保護問題についても研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
税務当局間の情報交換については、各国で裁判例が公表されていることから、これらの裁判例を今後詳細に検討していく。 移転価格税制とタックス・ヘイブン対策税制については、課税当局と納税者の間での証明責任の配分問題を、比較法的に検討していきたい。
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Remarks |
豪州クイーンズランド工科大学の Kerrie Sadiq 教授らと、各国におけるBEPSプロジェクトの法制化がどのように進展しているかについて共同研究を行い、その成果を、Kerrie Sadiq, et al., ed. Tax Design and Administration in a Post-BEPS Era (Fiscal Publications, 2019) として公刊した。
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