2019 Fiscal Year Research-status Report
An analysis of Legal Countermeasures to Hate Speech
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18K01244
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小谷 順子 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40359972)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 表現の自由 / ヘイトスピーチ / ハラスメント / 記憶と法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019(令和元)年度は、憎悪表現に関する憲法学上の論点のうち、日本及びアメリカの大学におけるハラスメント防止規程等に基づく憎悪表現の規制に焦点を当てた研究を行った。まず、アメリカの大学におけるハラスメント言論をめぐる連邦法制・事例・判例・学説を検証したうえで、日本の大学におけるハラスメント言論をめぐる法制・事案について、アメリカの学説等を参照しつつ取りまとめ、2019年12月に大阪で開催された国際学会(Asian Law and Society Association)において、口頭報告を行った(英語、後掲)。一連の研究を通し、アメリカにおいてハラスメント表現該当性が比較的幅広く解釈されて不利益処分等の対象となった事例が複数確認されたほか、アメリカの学説上、学生の教育環境の保護と修正一条(表現の自由)の保障との調整をめぐる従来型の対立が継続する一方で、近年は政権支持表明が規制対象とされることへの警戒感が提示されつつ、大学において規制しうる表現の条件が具体的に提示されていることが確認できた。 当該年度はまた、国家の法制度を通して過去の自国の歴史をめぐる記憶(差別主義の歴史の記憶を含む)の再構成を試みる「記憶の法(memory law)」の問題に焦点を当て、日本における「記憶の法」と呼びうる諸制度(教科書検定制度等)及びそれをめぐる判例を検証したうえで、2019年6月にブリュッセルで開催された「Memory Law in Europe and Beyond: Toward Ethical Governance of Historical Narratives」と題するシンポジウムにおいて口頭報告を行った(英語、後掲)。 これらの国際的な学会報告、シンポジウム報告及び質疑応答を通して、日本の議論の相対的位置づけを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大学におけるハラスメント言動の規制をめぐる論文の執筆が遅れており、当該年度中には刊行に至らなかったが、その他の点において本件研究は順調に進展しており、当該年度中に国際学会1件、国際シンポジウム1件の報告を行うとともに、国外の研究者からの有益なコメントを得ることができ、日本国内における研究成果をある程度相対視することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020(令和2)年度は、当初の交付申請書に記した研究実施計画に沿いつつ、まずは大学におけるハラスメント規制の論文を刊行させたうえで、日本における論争的表現の規制をめぐる判例及び学説の検証を実施する予定である。そのうえで、日本における問題につき、国内及び国際的な学会において研究報告を行う予定である。さらに、国内外の表現の自由の分野の研究者との交流を通して、今後の国際共同研究の基礎を築いていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策のため年度末の出張を取り止めたこと、また、一部の物品及び書籍の購入を見送ったことから、当該年度の残額が発生した。残額については、物品及び書籍等の購入のための費用として次年度(令和2年度)に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)