2020 Fiscal Year Research-status Report
An analysis of Legal Countermeasures to Hate Speech
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18K01244
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小谷 順子 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40359972)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 表現の自由 / ヘイトスピーチ / 憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020(R2)年度は、まず、憎悪表現への法的対処に関する憲法学上の諸論点のうち、日本における憎悪表現規制をめぐる議論に焦点を当てた研究を実施し、その研究成果について、10月17日に開催された全国憲法研究会の秋季総会において「社会の分極化とヘイトスピーチ」と題する報告を行った([学会発表])。当該研究では、アメリカにおける社会の分断化現象とそこから生じる憎悪表現規制への警戒感をめぐる議論を踏まえたうえで、日本社会の状況に着目し、規制への警戒感を一定程度顧慮しつつも憎悪表現のもたらす法益侵害の発生を防止しうる現実的な対応策(とくにジェノサイド扇動表現の規制の導入可能性)を提示した。また、当該年度には、大阪市ヘイトスピーチ対策条例を合憲とした2020(R2)年1月17日の大阪地裁判決にも着目し、国のヘイトスピーチ解消推進法の下における地方自治体の憎悪表現対策の条例制定権の限界等を含む諸論点についての分析を行い、オンライン記事として発表した([雑誌論文])。これらの研究活動を通し、比較憲法学の視点を取り込みつつ、日本における憎悪表現規制をめぐる議論に対し、一定の現実的視座を提供できたと考えている。 なお、当該年度は、日本の憎悪表現規制に関する研究成果を国際学会において報告することを予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、参加予定であった国際学会が延期となったため、国際的な情報発信を実施することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、参加を予定していた国際学会が延期となったために国際学会における研究報告が実現できなかったほか、資料収集等も順調に進めることができず、アメリカの諸規制に関する研究が遅れることとなり、当該年度中には当該テーマに関する論文刊行に至らなかった。一方、日本国内の憎悪表現規制に関する研究については学会報告及び論考刊行を実施して順調に成果を上げることができたが、総合的には「やや遅れている」と評価せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
2021(R3)年度は、当初の2020(R2)年度の研究実施計画に立ち戻り、米国に関する論文を刊行させたうえで、日本における憎悪表現規制に関する報告を国際学会において行うことを予定している。また、海外の表現の自由分野の研究者とのオンラインでの意見交換を継続し、国際共同研究の基礎を固めていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策のため、国際学会出席のための出張を含むほぼすべての出張の中止を余儀なくされたことに加え、一部の物品及び書籍の購入を見送ったことから、当該年度の残額が発生した。残額については、物品及び書籍等の購入等のための費用として次年度(令和3年度)に使用する予定であるが、引き続き国内外への出張が困難な状況が続くことが予想されるため、随時、計画を修正することを予定している。
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