2020 Fiscal Year Research-status Report
超スマート社会における決済システムの発展を踏まえた租税情報処理制度の法的研究
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18K01245
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 祐介 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50304291)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 経済のデジタル化 / デジタルエコノミー / デジタルプラットフォーマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新たな決済システムが発展しつつも現金が決済手段の約8割を占める日本社会の特殊性を前提に、近時のデジタル・エコノミーやクレジットカードなどの取引決済にみられる事業者への情報集約現象やリアルタイム処理のクラウド会計システムなどに着目して網羅的・目的限定的に情報を取得することにより、徴税漏れ(Tax Gap)を縮小しつつ、当該情報の適切な加工・利用を行う法的システムを構築することを目的とする。 本年度は、当初韓国における実地調査を通じた比較法アプローチによる調査研究を意図していたが、周知の通りコロナ禍によって国際的な移動が止められたため、急遽インターネット上の情報を対象に、国際比較のアプローチを用いて、OECDやEUなどにおけるデジタルプラットフォーマーを中心とした租税情報把握と流通、それを踏まえた賦課徴収にアプローチと対象を切り替え、VATのインボイスマッチングの成果や、キャッシュレス決済取引の捕捉状況を検討するとともに、当初計画よりもやや対象を広げ、税に関する情報の提供のあり方(消費税のいわゆる外税・内税問題)、いわゆる台帳課税方式を採る場合の情報の正確性の担保と修正、内心の自由や信教の自由に関わる情報流通の問題等も検討を行った。 現在はやはりコロナ禍により議論が停滞しているものの、OECDを中心とした議論において、プラットフォーム所得・消費課税に関する一定の議論の収斂ができつつあること、デジタル・エコノミーやキャッシュレス決済の進展が、特に国際的な現物財の取引に対する課税漏れ(税関での消費税課税漏れ)という、デジタル領域に留まらない影響を及ぼしており、影響を日本も受けている可能性が高いこと、消費者保護の観点からのみではない内税・外税問題の議論の方向性、情報取得と信教の自由との関係などにつき、示唆が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度はコロナ禍の影響で渡航できず当初意図していた海外調査は行えなかったが、研究成果でも述べたように、インターネット上の情報を対象に、国際比較のアプローチを用いて、OECDやEUなどにおけるデジタルプラットフォーマーを中心とした租税情報把握と流通、それを踏まえた賦課徴収、さらに消費者法的視点や憲法的視点に立った情報流通問題のあり方にアプローチと対象を切り替えたため、当初目標であった日本の議論のブレイクスルー自体はある程度達成できたものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は今後のまとめとして、具体的な最終制度モデルを提示することを目標とする。これまでの成果をまとめるとともに、所得税や法人税、消費税などこれまで議論してきた税以外の税(例えば固定資産税など)の情報取得にも目を向けると共に、社会保障を含む他法分野での利用や租税犯則調査と課税庁の 情報共有などについても提言を行いたい。 コロナ禍により、経済のデジタル化が加速したためにかえって情報流通のあり方(例えば国際的な情報移動)が注目を浴びたために議論が進展した側面もある。災いを転じて研究成果につなげることが肝要である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、国内/国際移動が全くできずに旅費が使用できなかったこと、対人接触を回避するために人件費を使用できなかったこと、外国書籍の出版が遅れ、かついわゆる年度またぎを防ぐために発注を差し控えたことが原因である。 移動ができない代わりに電子書籍・ジャーナルの購入必要性が増加したため、次年度以降はそちらに振り替えて使用する予定である。
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