2019 Fiscal Year Research-status Report
グローバルな政策決定に伴う議会制民主主義の空洞化に対する司法的統制の理論構築
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18K01247
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村西 良太 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (10452806)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 議院内閣制 / 権力分立 / 議会留保 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、グローバルな政策決定に伴う議会制民主主義の空洞化を分析対象とするところ、かかる分析の前提として、議会制民主主義(具体的には日本国憲法の規定する議会と政府、さらには国民の関係)に対する十全な考察が不可欠である。そのような考慮に基づき、議院内閣制における国会の組織構造と権能を再吟味することが、2019年度の主たる課題となった。一見したところ新味に乏しい研究でありながらも、政治学を専攻する研究者と複数回にわたって対話を重ねることにより、従来の憲法学説において不十分な論究に留まってきた課題を浮き彫りにすることができた。その要点を端的に記すならば、憲法学における従来の思考は、国会と内閣との「分立」を強調する方向で、あらゆる争点を論じがちであったように思われる。これに対して、日本国憲法が国会(とりわけ衆議院)の信任に依拠する内閣(議院内閣制)を構想していることからすれば、統治権を内閣と分有する国会、すなわち統治権の行使にあたって内閣と協働する国会を前提に、そのあるべき組織構造ないし権能行使の手続きが論ぜられなければならない。以上の研究成果は、一般市民の理解にも資する語り口を意識しつつ、「両院制にとどまらない国会の憲法問題」と題する原稿にまとめられた。この小稿(を収めた共著)は、年度をまたいで2020年に公刊される予定である。 本研究課題において比較研究の対象となる日独の憲法学説はいずれも、「議会留保」や「法律の留保」を重視してきた。政府(内閣)の政策決定に議会(国会)の事前承認を求めるこれらの原則は、いずれも両機関の「分立」を強調する思考に依拠するところ、議院内閣制の下でこうした「分立」の局面にばかり着目することの当否は、今後さらに検証されなければならない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ささやかながらも研究成果を公表しつつ、文献収集とその分析をおおむね予定どおりに進めることができているから。もっとも、ドイツでの資料収集およびインタビュー取材は、まだ実現できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
議会留保の後退を「選挙権」の侵害とする立論について、ドイツの判例および学説を詳細に検討し、論文として公刊したい。また、議院内閣制における議会の組織のあり方について、研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
1.購入を予定していたドイツ語書籍(複数)が年度内に刊行されず、次年度(以降)の刊行を待つこととなったため。これらの書籍については、刊行されしだい、すみやかに購入する。 2.実施を予定していたドイツへの出張が、日程調整の不調により、次年度(以降)への延期を余儀なくされたため。令和2年度に出張を再計画する。ただし、新型コロナウイルスが収束していない場合には、オンライン会議をもって代替することも検討したい。
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