2021 Fiscal Year Research-status Report
グローバルな政策決定に伴う議会制民主主義の空洞化に対する司法的統制の理論構築
Project/Area Number |
18K01247
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村西 良太 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (10452806)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 機関訴訟 / 法律上の争訟 / 主観訴訟 / 客観訴訟 |
Outline of Annual Research Achievements |
諸政策の形成ないし実施が国内では完結せず、国際的な協調ないし平準化の要請に服しつつ遂行されるとき、憲法に基づく国内の統治構造は大きな変容をこうむる。他国との交渉を担い、政策決定の主導権を握るのは内閣(を頂点とする行政府)であり、これに伴って議会は、本来的にはたとえば立法権の名のもとに手中に収めていたはずの規律権・決定権を喪失する。本研究課題は、グローバルな政策決定に伴うかような議会から内閣への重心の移動を念頭に「議会制民主主義の空洞化」を追究してきた。 けれども、いわゆるグローバル化の進展をいったん措いて日本における国会と内閣の関係をあらためて観察するとき、「議会制民主主義の空洞化」が意味するところはいっそう多様であることが浮き彫りとなる。議院内閣制(内閣の存立を国会〔とりわけ衆議院〕の信任に依存させるシステム)のもとでは、内閣とそれを支持する国会の多数派が党派的に一致するから、国会による政府統制といっても形骸化の恐れが常に付きまとう。この古典的な懸念は、けっして机上の想定にとどまるものではない。そのことを否応なしに突き付けたのが、臨時会の召集要求(憲法53条後段)にもかかわらず内閣が適時の召集決定を怠る事案であった。 本研究では、かかる不召集の当否が国家賠償請求訴訟として争われた判決(那覇地判令和2年6月10日)を考察の素材として取り上げることとした。国会は会期の期間中にかぎって活動能力を有し、この会期を開始させるのが召集行為である。したがって、内閣による不召集は、議会制民主主義の最低限の機能条件を破壊する営みにほかならず、その司法的統制はさらなる追究に値する課題であると考えられる。かかる分析は判例評釈として公刊された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「議会制民主主義の空洞化」が意味する事象は多様であり、その概観に資する研究成果(論説)の公表を期していたが、年度内には達成できなかった。ただ、執筆にはすでに着手しており、2022年度中には確実に公表できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、「議会制民主主義の空洞化」として把捉されるべき多様な事象について、その概観に資する研究成果を公表する予定である。 第二に、上記の多様な事象のなかには、司法的統制の途がこれまで事実上絶たれてきたものがあるところ、その克服に向けた理論構築を図る予定である。ドイツの理論状況の一端は、2020年度にすでに研究成果として公表されており、それと日本の判例・学説との比較は有益な視座となりうるであろう。
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Causes of Carryover |
第一に、2021年度に購入を予定していた複数のドイツ語書籍が公刊に至らなかったため。 第二に、ウイルス騒動の継続に伴って出張が実施できなかったため。
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