2022 Fiscal Year Annual Research Report
The erosion of parliamentary democracy under globalization and the functions of the judiciary
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18K01247
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村西 良太 大阪大学, 大学院高等司法研究科, 教授 (10452806)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 議会制民主主義の空洞化 / 国会の権限放棄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は「議会制民主主義の空洞化」を防遏すべき事象と捉えたうえで、とりわけ司法権(裁判所)の果たすべき役割に光を当てようとする試みである。 ところで、「議会制民主主義の空洞化」という命題は必ずしも一義的でないところ、その内容を十分に明確にしないままでは、本研究における問題の所在がぼやけてしまうだろう。かような考慮に基づき、「議会制民主主義の空洞化」が指し示す事象を具体的に整序しつつ析出させること、これが本年度の主要な課題に据えられた。 「議会制民主主義の空洞化」は、①「立法機関としての」国会の凋落、および②「行政統制機関としての」国会の凋落という2つの視角から、それぞれ深く考察されるべきではないか。まず①について、国会は何よりもまず法律を制定する機関として位置づけられつつも、重要な規律の中身をみずから決定し、詳密に書き込む力を喪ってすでに久しい。また、条約を承認し、その国内実施に必要な担保法を整備することも国会の任務に属するところ、条約の規範内容は締結後のさまざまな事情によりしばしば国会の関与を経ないまま変遷すること、加えて、担保法の制定における国会の自律的な政策決定の余地は多くの場合きわめて乏しいこと、が指摘されてきた。 次に②について、議院内閣制下の議会たる国会には、内閣を創出し、その活動全般に統制を及ぼす機能が与えられている。けれども、議院内閣制の下で国会の多数を占めるのは内閣を恒常的に支持する党派であり、しかも、こうした国会内多数派と内閣との融合を強化する制度が相俟って、国会の行政統制は大きく後退している。 国会の継続的な関与が著しく限られることを知りつつ超国家的合意に承認を与えるのも、盤石な与党に支えられた内閣強化に仕える制度を構築するのも、ほかならぬ国会である。こうしたいわば国会の権限放棄を匡正する役割は、裁判所に期待されるほかないように思われる。
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