2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K01248
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 和彦 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (40273560)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 憲法 / 環境法 / ドイツ法 / 民主主義 / 法治主義 / 環境リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、公法の視点から、環境リスク・マネジメントを規律する法的枠組みがいかにあるべきかを解明するため、反省法・学習法としての環境法の構造分析を行い、憲法学を中心とする公法学の基礎理論(とりわけ民主主義原理と法治主義原理)に遡って、そのありようを再検討するものである。併せて、科学的に不確実な状況下での環境リスク・マネジメントの過少性・過剰性に対処するため、予防原則と比例原則にも再検討を加え、その法構造を明らかにしようとしている。 本年度は、民主主義原理に関する基礎理論を古典的研究(Hans Kelsenの多元主義的な民主主義理解)を参照しつつ、同時に最新研究(Jens Kerstenのシュヴァルム・デモクラシー論)の成果も摂取して、本研究の基礎理論構築に活かすことを試みた。民主主義原理はグローバル化と専門技術化の進展の中で、絶えず再検討を余儀なくされているが、そのポテンシャルにはなお注目し続ける価値があることが確認できた。また、比例原則・予防原則・平等原則といった公法解釈の法原則の再検討を行い、これら3つの法原則が相互に協働と対抗の関係にあることを明らかにした上で、その相互関係を形作っている法構造を分析した結果を、公法学会の場で研究報告した。 具体的な環境リスクの問題として、以前から考察の対象としているアスベストの問題を再び取り上げ、近時の最高裁判決(とりわけ泉南アスベスト事件判決)の検討という視角から、問題にアプローチした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
民主主義原理の検討は、古典的研究と最新研究の双方から行うことを通じて、だいたい想定通りのところに落ち着いている。ここから環境リスクを取り扱う際に必要とされる専門技術性のあり方と民主的正統性論の関連性について、研究を進めることになる。 比例原則・予防原則・平等原則の相互関係についても、おおむね解明できた。公法学会の場で研究報告したことについても、原稿の形にまとめ上げることができたので、これをさらに推敲し、専門雑誌等で公表できるようにブラッシュアップしているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
環境リスク・マネジメントの法理論のうち、ドイツ公法学(あるいはヨーロッパ公法学)に由来する法理論の検討を進めたいと考えている。民主主義原理の検討も引き続き進めるが、それと並行して、権利論(とりわけ環境権論)の検討に着手し、一定の成果をあげることを今後の目標にするつもりである。
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Causes of Carryover |
ドイツの書店から代理店を経由して購入した洋書の金額が、為替変動の結果、少しだけ安価になったため。差額分は次年度の図書購入費に充てたい。
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