2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01252
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
井上 武史 関西学院大学, 司法研究科, 教授 (40432405)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公法学 / 憲法 / 結社の自由 / 団体規制 / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、団体に対する公的規制を結社の自由に関わる憲法問題であると位置づけて、具体的な規制措置の憲法論的な分析と評価を行うとともに、新たな規制立法に対する憲法論的な視座を提示することである。 本研究の全体計画は、①団体規制要件の憲法論的な条件設定、②規制措置の手続要件および発動プロセスにおける憲法上の要請、③新たな規制措置に対する合憲的な制度設計の3つからなるが、本年度は、③について団体規制としてどのような措置や手段が可能であるかを、比較法的な知見を参考にして検討した。具体的には、今日の諸外国では、集団的・組織的テロやフーリガン、あるいは国境を越えた組織的・集団的犯罪に対処するために、団体に対する送金禁止や資産凍結などの資金規制や国際的な監視などの様々な規制措置がとられる例が見られるが、その中でも、スポーツイベントなどでの暴動行為を抑制する法制としてのフーリガン対策法制を取り上げた。その成果は、井上武史「フランスにおけるフーリガン対策法制」小山剛ほか編『日常の中の<自由と安全>』(弘文堂、2020年)288~299頁として公表されている。 また、本年度は、団体としての家族のあり方について、特に離婚後の親子の法的関係に焦点をあてて検討を行った。その成果は、井上武史「離婚した父母と子どもとの法的関係――夫婦の別れは親子の別れなのか?」法律時報2021年1月号(93巻1号)98~104頁、井上武史「山口コメントへの再応答」法律時報2021年2月号(93巻2号)113~114頁、井上武史「国際人権法および憲法から見た離婚後共同親権」日仏文化90号(2021年)66~73頁として公表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初計画通りに進捗しており、成果も公表している。さらに、私法上の家族を人的結合という意味での団体ととらえる視点から、その中での人権問題にまで関心対象を広げており、その方面での成果もいくつか公表している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、これまでの研究成果をまとめる作業を行うことにしたい。 さらに、新型コロナウイルスの影響で各国で集会や団体の規制が行われており、その適否についての判例も徐々に生み出されている。これらは緊急時の団体規制とその統制という観点から憲法や人権上も重要な意味をもつものであり、検討課題に含めることにしたい。これにより、平時と非常時を含めた団体規制法の体系化・理論化が可能になると考えられる。
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Causes of Carryover |
国内・国外出張計画が中止されたため、当初予定していた旅費を執行することができなかった。次年度に再度計画することを試みたい。
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