2018 Fiscal Year Research-status Report
ヨーロッパにおける二重機能型国務院の比較法的研究-権力分立と人権保障の観点から-
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18K01256
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
奥村 公輔 駒澤大学, 法学部, 准教授 (40551495)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イタリア国務院 / フランス国務院 / フランス内閣事務総局 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、諮問機能と裁判機能の二重機能を有するフランス、ベルギー、オランダ及びイタリアの国務院を比較検討するものであるが、代表者はこれまですでにフランス、ベルギー及びオランダの国務院については一定程度の研究を行ってきた。そこで、本年度はまず、他の邦語文献すら存在しないイタリア国務院に焦点をあて、その制度概要を理解するために、イタリア国務院に関連する法令を翻訳した。その成果として、奥村公輔「イタリア国務院関係法令集」駒澤大学法学部研究紀要77号(2019年)1-27頁を執筆した。 次に、フランスに関しては、国務院と密接に関係する機関である内閣事務総局に着目し、内閣事務総局の機能を明らかにしつつ、内閣事務総局と国務院(とりわけ諮問機能を有する行政部)との関係を分析した。その成果として、奥村公輔「内閣官房の機能に関する比較法的考察―フランス内閣事務総局の機能との対比」毛利透=須賀博志=中山茂樹=片桐直人編『比較憲法学の現状と展望 初宿正典先生古稀祝賀』(成文堂、2018年)373-400頁、奥村公輔「フランスにおける国家諸機関の憲法解釈の相互作用 政府諸機関間の相互作用」比較法研究80号(2019年)135-143頁を執筆した。また、憲法院と国務院行政部及び訴訟部との関係を含めて、フランスにおける憲法院の憲法適合的解釈についても検討を行った。その成果として、奥村公輔「フランスにおける憲法適合的解釈――憲法院による解釈留保付き合憲判決と国家機関によるその尊重」土井真一編『憲法適合的解釈の比較研究』(有斐閣、2018年)149-178頁を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでフランス、ベルギー及びオランダの国務院ついては自身の研究蓄積があったのに対し、イタリアの国務院については全く研究実績がなかった。しかし本年度に、イタリア国務院に関連する法令を翻訳し、それを公表することで、イタリア国務院に関する制度概要を理解できたことは大きな成果であった。 また、フランスに関しては、国務院と密接な関係にある内閣事務総局や憲法院との相互作用を検討することができ、フランスにおける国務院の位置づけをより明確に理解することができた。ただし、文献からは知ることのできないフランス国務院の実態について解明するために本年度フランス国務院へのインタビュー調査実施予定であったが、諸事情により実施することができたかった。とは言え、同様の目的で平成31年度にベルギー、オランダ及びイタリアの国務院へのインタビュー調査を予定しており、その際に、フランス国務院へのインタビュー調査も実施できそうであり、当初の計画への支障はさほどない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、フランス、ベルギー、オランダ及びイタリアの国務院の二重機能についてそれぞれ検討する。 フランス国務院に関しては、諮問機能と裁判機能との関係の分析をこれまでの研究蓄積を活用しながら進めていく。また、本年度実施できなかったフランス国務院へのインタビュー調査も実施し、文献からは知りえない情報も獲得する。 ベルギー、オランダ及びイタリアに関しては、それぞれ諮問機能については自身の研究により明らかにしつつあるが、裁判機能についてはさほど研究が進んでいない。そこで、裁判機能の実態を明確にするために関係法令の翻訳をするとともに、それぞれの行政裁判制度を分析する。その上で、それぞれ、諮問機能と裁判機能との関係の分析を行う。また、平成31年度に実施予定であるそれぞれの国務院へのインタビュー調査を確実に実施し、それぞれの国務院に関する実態を把握する。 こうした平成31年度の研究を踏まえ、平成32年度は、諮問機能と裁判機能という二重機能を有するフランス、ベルギー、オランダ及びイタリアのそれぞれの国務院の比較検討を行う。
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