2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K01257
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
楠 茂樹 上智大学, 法学部, 教授 (70324598)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 公共調達 / 会計法 / 地方自治法 / 付帯的政策 / 二次的政策 / 入札談合 / 経済性 / 競争性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度においては、おおよそ下記の通りの研究作業を遂行した。 (1)公共調達における本来的目的以外の政策を付帯させることに係る、会計法令(会計法、地方自治法等)上の諸規定を、(財務省現役官僚、会計検査院出身者の手による)コンメンタール等の記述を参照しつつ整理した。(2)東京都、山形県、京都府等の地方自治体、国土交通省、防衛省等の国の機関の開催している研究会、委員会等を通じて、あるいはこれから機関を中心とした関係者へのヒアリングを通じて、付帯的政策の正当化、制度上の制約、具体的な反映の仕方等について、実務的対応、現状について情報収集を行った。(3)英文文献を通じて、あるいは財務省が開催している研究会への参加を通じて、諸外国(主として、米国(連邦)、EU(およびその構成国)について)の公共調達における付帯的政策の反映の仕方について、法令上の根拠、関連する裁判例、実務上のガイドライン等についてサーベイを行なった。(4)付帯的政策と対立すると考えられている「経済性の原則」を、「競争性の原則」「公正性(平等性)の原則」、デュープロセスといった諸原理と付き合わせつつ、批判的に考察した。加えて、(5)沖縄振興政策のような公共事業の存在自体が社会政策的意義を帯びているものについての特別な考慮のあり方について、相応のサーベイを実施した。なお、現段階ではこのテーマに係る研究業績は公表されていないが、拙著『公共調達と競争政策の法的構造(第2版)』の後継となる研究書である『公共契約の法と政策』の執筆に取り掛かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、付帯的政策をめぐる日本法の特殊な制度上の特性についてある程度明確な視点が得られたことは大きな成果である。特に計上された予算が(計上された段階で)付帯的政策を射程としていない場合、そもそもの民主的意思決定のフィルターを通していないとの理由で否定的に理解されがちであるが、「予定価格」の存在は付帯的性格を正当化の余地を与えるのではないか、との問題意識を持つに至った。第二に、会計法令上、付帯的政策の法令上の根拠が明確な米欧と、会計法令外部の法令(あるいは政治的な意思決定)に付帯的政策の根拠を求める傾向のある日本という比較法考察の視点を得ることができた。第三に、付帯的政策の象徴的存在ともいえる「公契約条例」について一定の情報収集ができた。第四に、予想以上に多くの(調達実務に係る)サーベイができた。とりわけ、総合評価方式における付帯的政策の実現に向けての国土交通省他の取り組みについて、その実務面についての情報に多く接することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度においては、前年度の研究実績をベースに、考察の対象となる諸外国の制度、実務についての深掘り、ヒアリング先の拡大に加え、我が国の会計法令における付帯的政策の実現に向けての法解釈論、立法論のある程度の展望を行うことを課題とする。予定価格の存在自体が立法上の課題として議論される中、付帯的政策の問題は如何にして公共調達に係る財政支出の民主的コントロールを及ぼすかという会計法令の根源的問題であるといえることから、総合評価方式等多様な入札契約方式の展望と併せて、全体的視点に立った研究を進めていく。
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