2020 Fiscal Year Annual Research Report
Historical development of the principle of popular sovereignty and nationality legislation in France -Republicanisme, naturalization and dual citizenship-
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18K01261
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
菅原 真 南山大学, 法学部, 教授 (30451503)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重国籍 / フランス / 国民主権 / 国籍法 / 共和主義 / 帰化 / フランス憲法 / 参政権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「革命期から現代までのフランスの国籍法の変化を明らかにしながら、重国籍および帰化者の政治的権利の法的展開を、憲法学の観点から理論的・実証的に解明すること」にある。 まず、フランス共和主義の伝統は、法的にフランス市民であるはずの帰化者に対して「同化の見習い期間」を設定し、一定期間公的領域から排除することを当然視してきた。1945年法は政治的権利に関する帰化者の一時的無能力を規定し、二流市民扱いをした。現在、新たな共和主義の理念に基づき、一度フランス国籍を取得すれば、フランス市民の間に差別があってはならないと解されている。しかしテロ行為によって有罪判決を受けた帰化者の国籍を剥奪する法律規定は平等原則に反しない(憲法院)。 次に、フランスは「伝統的に重国籍を許容してきた」。その理由は人口増加政策である。1927年法は、第一次世界大戦後の人口減少への対策として、フランス国籍を欲する多数の移民に対し、帰化または婚姻を通して国籍を付与することを認め、さらに父母両系血統主義を採用した1974年国籍法は、帰化者の重国籍を容認し、自発的意思で他国の国籍を取得してもフランス国籍を維持することを容認した。重国籍への法的対応について、フランスでは二つの柱がある。第一に「何か問題がある場合には、フランスにおいてはフランス国籍が優位する」という原則、第二に「何も問題がない場合には、最も実効的な国籍が優位する」という原則である。重国籍者は、それぞれの国籍国によってその国の国民とみなされ、いずれの国でも国内法によって単国籍の自国民として扱われる。そもそも国籍を誰に付与するかは立法府の裁量であり(憲法院)、一人一票原則はそれぞれの国籍国においては維持されている。重国籍者の被選挙権を奪うことは欧州人権条約1議定書第3条に反する(欧州人権裁判所)と解されている。
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