2020 Fiscal Year Research-status Report
子ども法における公私の法主体による支援の法関係構造
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18K01263
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
横田 光平 同志社大学, 司法研究科, 教授 (10323627)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 子ども法 / 児童福祉法 / 養子縁組 / 児童虐待 / 子ども・子育て支援法 / 保育料 / 家庭的保育 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題は申請者のライフワークである「子ども法の構築」の一環であり、子ども法の「第4層(基本構造)」に位置づけられるが、子ども法における行政活動の特徴としての介入と支援の複合的性格に焦点を当てた研究を、子ども法の複数の領域にわたって行った。 まず、児童虐待に関し、「児童福祉法の基本構造と民法」と題する論文をまとめた(再校済)。同論文は、児童福祉法上の措置と民法上の親権だけでなく、民法上の未成年後見との関係をも整理する必要があると同時に、児童福祉法の対象となる被措置児童等虐待をも視野に入れる必要があることを明らかにし、子どもの権利保障の視点を踏まえるべきことを強調するものである。関連して、『実務コンメンタール児童福祉法・児童虐待防止法』(有斐閣,2020)が公刊された。申請者は児童虐待に係る児童福祉法の主要規定である同法27条、33条ほかの重要規定を担当しているが(共同執筆)、記述内容は従来の研究の成果である。 一方、前年度の学会報告をまとめた「行政法からみた養子法-もしくは子どもの権利条約からみた養子法」が学会誌「家族<社会と法>」36号(2020)に掲載された。同論文では、養子法との関連で養子縁組里親につき考察したが、関連して「里親委託の両義的性格に関する法的考察-行政法学と民法学の協働」と題する論文をまとめた(三校済)。 さらに、「縮小社会における子ども・子育て支援と学校教育」と題する研究会報告を行い、論文としてまとめている過程にある。関連して、子ども・子育て支援法に定める家庭的保育における損害賠償事件につき判例評釈を行い(賃金と社会保障1766号(2020)掲載)、執筆過程において、家庭的保育事業に関する保育料の強制徴収の定めを手がかりに、離婚後の養育費確保のための行政関与まで視野に入れた行政法と家族法の協働に向けた論文の着想を得て、論文執筆の準備を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、申請者のライフワークである「子ども法の構築」の一環であり、子ども法の「第4層(基本構造)」に位置づけられるが、本研究課題を遂行することによって、子ども法における行政活動の位置づけに関する理論的解明はほぼ終えることができるところ、予定していた①児童福祉法と民法の関係の解明、②養子法への行政関与の考察、③里親委託の両義的性格の解明、④子ども・子育て支援と学校教育の総合的考察は、いずれもほぼ研究を終えることができた。 さらに、当初予定になかったことであるが、子ども・子育て支援における保育料の強制徴収につき考察することを通じて、民法における離婚後の養育費支払い確保への行政関与の問題と共通に論ずるべき視点の存在に気づき、離婚後の子どもの問題への行政関与の問題についても基本的な考え方をまとめることができた。 その分、子ども法の「第4層」のまとめという点では、当初の予定よりも時間がかかることとなったが、想定外の研究内容の充実によるものと受け止めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究から得られた示唆を踏まえ、児童福祉法56条における保育料の強制徴収の定めと離婚後の養育費支払い確保につき、行政法及び家族法理論を踏まえ、共通の枠組みで論じ、論文にまとめる(9月末脱稿予定)。適宜、前年度にほぼ研究を終えた子ども・子育てと学校教育に関する論文と相互参照しつつ、総合的な考察を目指す。 その後、行政活動を超えて子ども法の視野を広げ、父母間の問題と子どもの関係について、子ども・親・国家の3面関係の視点から総合的に捉えなおす。その際、父母と異なる子ども独自の地位、子どもの意思の視点を強調することによって、従来の議論とは異なる「子ども法」の視点からの理解を提示する。この研究は、「子ども法」の第1層「理念」に関わるものであり、「子ども法」の全体構想の構築につながっていく。
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Causes of Carryover |
最も大きな理由は、研究の中核を占める毎月の児童福祉法研究会と、それに伴う児童福祉関係者へのインタヴュー、打ち合わせのために東京に出張する予定が中止を余儀なくされたことにより、研究費の相当部分を占めていた旅費の支出が一切なくなったことである。 この事情は次年度においても継続することが予定されるため、使用計画を練り直すことは容易ではないが、状況が許すのであればできるかぎり東京出張を行うとともに、予定通りの出張が難しい場合は、児童福祉の実際についての最新の知見とはいかないまでも、次善の策として、すでに図書として公刊された知見を研究の手掛かりとすべく、多くの図書を購入することとしたいと考えている。
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