2018 Fiscal Year Research-status Report
ドイツにおける計画確定決定を争う訴訟の研究:都市計画争訟制度の整備のために
Project/Area Number |
18K01264
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
湊 二郎 立命館大学, 法務研究科, 教授 (00362567)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 計画確定決定 / 出訴資格 / 理由具備性 / 完全審査請求権 / 適正な衡量を求める権利 / 手続の瑕疵の効果 / 団体訴訟 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果として,立命館法学381・382号(2019年3月)1~40頁に「計画確定決定における出訴資格と理由具備性(1)」を掲載した。立命館法学383号に掲載予定の「計画確定決定における出訴資格と理由具備性(2・完)」の原稿も2018年度中に提出済みであるが(2019年4月22日に初校終了),刊行は2019年6月となる。これらは,元々は1本の論文であるが,全体の文字数が6万字を超えるものになったため,2つに分割して掲載されることとなった。文字数が多くなった原因は,2019年度に検討する予定にしていた,手続の瑕疵に関する問題を詳しく取り上げた点にある。2018年度の研究では,ドイツにおいて連邦道路や空港・鉄道等を建設・拡充するための計画を確定する法的効果を有する計画確定決定を第三者が争うケースに着目して,誰が訴訟を提起できるのか(出訴資格),どのような場合に勝訴できるのか(理由具備性)を関連づけて検討した。計画確定決定に基づいて自己所有地を収用される収用的利害関係人は,原則的に出訴資格を有するとともに,計画確定決定の全面的な適法性審査を求めることができる(完全審査請求権)。ただし,瑕疵と原告の土地の収用との間に因果関係がない場合には,理由具備性は認められない。騒音・排気ガス等の影響を受ける間接的利害関係人や市町村は,騒音防止等の自己利益の適正な衡量を求める権利の侵害可能性がある場合に出訴資格を認められるが,他者や自然・希少種保護等の利益に関する瑕疵を主張することはできない。環境保護団体も計画確定決定を争う訴訟を提起できるが,団体が推進する環境保護の目標との関連性があることが要件となっている。これらの原告が提起した訴訟において計画確定決定を違法とした最高裁レベルの判決も複数存在している。日本においても,道路計画等に対する法的救済を拡充する必要があるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度においては,ドイツにおける計画確定決定の取消訴訟に着目して,出訴資格と理由具備性を関連付けて検討することを予定していたところ,立命館法学381・382号(2019年3月)1~40頁に「計画確定決定における出訴資格と理由具備性(1)」を掲載することができた。立命館法学383号に掲載予定の「計画確定決定における出訴資格と理由具備性(2・完)」の原稿も2018年度中に提出済みであるが,刊行は2019年6月となる。 上記各論文は,元々は1本の論文であり,2018年度中の公表を予定していたが,全体の文字数が6万字を超えるものになったため,2つに分割して掲載されることとなった。文字数が多くなった原因は,手続の瑕疵に関する問題を詳しく取り上げたという点にある。当初の計画では,手続の瑕疵については2019年度の研究で検討することを予定していたが,2018年度の研究を進めていくうちに,手続の瑕疵の問題をあわせて取り上げる必要があることが判明したため,このような結果になった。もっともこれに関連して,2019年度においては,手続の瑕疵の問題を取り上げる必要がなくなったので,衡量の瑕疵の問題に集中して検討することとしたい。 以上の経緯で,本研究課題のトータルな進捗状況としては,おおむね順調に進展していると評価することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツにおける計画確定決定に関しては,衡量の瑕疵や手続の瑕疵が結果に影響を及ぼさなかった場合には,当該瑕疵を有意でないものとする法律の規定が存在しているところ,当初の計画では,2019年度においては,有意な衡量の瑕疵や手続の瑕疵が認められるのは具体的にどのような場合か,実際に有意な瑕疵が認められた例はあるのかという点を解明することを予定していた。前記の通り,2018年度の研究において,手続の瑕疵の問題を取り上げたので,2019年度では,衡量の瑕疵およびその有意性の問題に集中して検討することとしたい。研究成果である論文は,立命館法学にて2019年度中に公表する予定である。 また,ドイツにおける計画確定決定に関しては,瑕疵が計画補完または補完手続によって除去可能である場合には計画確定決定は取り消されないものとする法律の規定も存在するところ,これに関しては,当初の計画通り,2020年度に検討することとしたい。
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Causes of Carryover |
2018年度の配分額について,物品費・旅費等として順次執行していった結果,残額が2054円となった。 この額については,2019年度における物品費(特に書籍購入費)としてあわせて使用したい。
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