2019 Fiscal Year Research-status Report
ドイツにおける計画確定決定を争う訴訟の研究:都市計画争訟制度の整備のために
Project/Area Number |
18K01264
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
湊 二郎 立命館大学, 法務研究科, 教授 (00362567)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 計画確定決定 / 衡量要請 / 衡量の瑕疵 / 代替案 / 計画裁量 / 取消訴訟 |
Outline of Annual Research Achievements |
科研費の助成を受けた研究成果として,①「計画確定決定の取消訴訟における出訴資格と理由具備性(2・完)」立命館法学383号(2019年6月)71~99頁,②「計画確定決定の衡量統制に関する一考察(1)」立命館法学385号(2019年12月)1~37頁,③「計画確定決定の衡量統制に関する一考察(2・完)」立命館法学386号(2020年2月)50~82頁を公表した。①は,ドイツにおける道路の建設等を認める計画確定決定の取消訴訟について,特に市町村および環境保護団体が出訴する場合の特色について検討したものであり,2018年度中に完成していたが,公刊が2019年6月になったものである。市町村の場合は騒音等の被害を受ける者が原告となる場合と共通するところが多い。環境保護団体の場合は,客観的な適法性統制に近くなるが,当該団体の目的に応じた制限もある。 ②・③は,ドイツの計画確定決定に有意な衡量の瑕疵が認められるのはどのような場合か,という点を検討したものである。日本においては,計画裁量の違法が裁判所によって認められることはほとんどないが,ドイツの計画確定決定を争う訴訟では,計画裁量の違法(衡量の瑕疵)を認めた連邦行政裁判所の判決が多数みられる。ドイツでは,1990年代に,結果に影響を及ぼさなかった衡量の瑕疵の有意性を否定する法律の規定が設けられたが,2015年の連邦憲法裁判所決定は,瑕疵が結果に影響を及ぼさなかったことを裁判所が認定することのできる場合を制限すべきことを判示しており注目される。また,道路・鉄道・送電線事業にかかる計画確定決定については,2010年代において,路線案の選択に関する有意な衡量の瑕疵を認める連邦行政裁判所の判決が相次いで登場するようになっている。 上記の研究成果については,京都行政法研究会2019年5月・12月例会(於:立命館大学)にて報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度においては,ドイツにおける計画確定決定の取消訴訟に着目して,出訴資格と理由具備性を関連づけて検討することを予定していたところ,立命館法学381・382号(2019年3月)1~40頁に「計画確定決定の取消訴訟における出訴資格と理由具備性(1)」を,立命館法学383号(2019年6月)71~99頁に「計画確定決定の取消訴訟における出訴資格と理由具備性(2・完)」を掲載した。後半部分を2018年度中に公表できなかった原因は,2019年度において検討する予定であった,手続の瑕疵の問題を詳しく取り上げたという点にある。 2019年度においては,当初は,計画確定決定の取消訴訟における衡量の瑕疵と手続の瑕疵の両面を検討する予定であったが,上記の通り,手続の瑕疵の問題を2018年度の研究で詳しく取り上げたので,2019年度の研究は衡量の瑕疵に集中することとした。その結果,立命館法学385号(2019年12月)1~37頁に「計画確定決定の衡量統制に関する一考察(1)」を,立命館法学386号(2020年2月)50~82頁に「計画確定決定の衡量統制に関する一考察(2・完)」を掲載することができた。 また,上記の研究成果については,京都行政法研究会2019年5月・12月例会(於:立命館大学)にて報告を行った。 以上の経緯から,本研究課題の進捗状況については,おおむね順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度では,当初の予定通り,計画確定決定に関する計画補完および補完手続について研究を行う。ドイツ法では,計画確定決定に有意な瑕疵がある場合であっても,当該瑕疵が計画補完または補完手続によって除去することができるときには,計画確定決定の取消しは認められないものとされている。そこで,計画補完および補完手続とはどのようなものか,瑕疵が計画補完または補完手続によって除去することができるのはどのような場合か,という点を解明することとしたい。計画補完の場合は,裁判所は行政庁に対して義務付け判決を下す一方,補完手続の場合には,裁判所は計画確定決定の違法確認判決を下すという運用がなされている模様である。研究成果である論文は,2020年度内に立命館法学に掲載する予定である。コロナ問題もあるが,戦後ドイツの連邦行政裁判所の判例を中心とした研究であるので,必要な資料はウェブ等を通じて入手することができると考えている。
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