2021 Fiscal Year Research-status Report
Cross-border Transaction and Tax Deferral
Project/Area Number |
18K01265
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
宮本 十至子 立命館大学, 経済学部, 教授 (30351315)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 組織再編税制 / 課税繰延 / EU租税回避防止指令 / BEPS |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は最終年度であったが、コロナ感染拡大により海外渡航が延期されたため、研究計画を1年延長することになった。学会等の開催がオンラインでの実施となり、EATLP総会、IFA、MPI研究会等の国際学会及び研究会に参加し、国際課税の最新の動向を確認した。さらに、日本税法学会大会、租税法学会総会(1日目対面)、日本年金学会総会、IFA日本支部セミナー、関大租税法研究会等にZoomで参加し、情報収集に努めた。 EUは、OECDのBEPS(税源浸食と利益移転プロジェクト)の実施に向け、租税回避防止指令を採択し、それを受け、ドイツは、ATAD導入税法を制定した。居住地、財産の国外移転による自国課税管轄の離脱への対抗措置であるドイツの離脱課税関連規定の改正動向を検討し、研究報告を経て、論文を公表した(「ATAD導入によるドイツ離脱課税規定の改正」)。EU法との整合性を図った新たなドイツ離脱課税規定は、支払課税繰延方式(納税猶予制度から延納制度)の統一化を念頭におき、第三国への拡張、要件の厳格化を図り、その影響はEU域外の第三国にも及ぶ。本検討から、我が国の課税管轄の離脱対処規定の課題を指摘した。 内国法人の国際的現物出資に焦点をあて、日独比較の観点から課税繰延便益と課税権の喪失についての問題を検討した(「クロス・ボーダー現物出資と課税権の喪失-日独比較法の観点から-」『公法・会計の制度と理論』649-669頁)。内国法人に対する日本の現物出資課税制度の沿革をたどり、移転資産の課税繰延方式、国際課税原則の変更によりパッチワーク的に対処規定が整備されてきたことを明らかにした。課税管轄の排除又は制限に係る事象へのドイツの防御スタンスは、租税条約の適用も考慮し、これに厳格に対処するものである。課税繰延便益に対する課税権の喪失には、租税条約の適用も考慮し、対処規定を整備する必要があることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により、ドイツへの渡航が難しく現地調査ができなかったため、研究計画を1年延長した。計画変更と調整に時間がかかったが、京都大学での調査研究により、資料収集を進めることができ、さらに、2023年2月からドイツのミュンスター大学に滞在し、ここを拠点に現地調査ができることになった。これまでの研究進捗の遅れを取り戻しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、令和3年度に予定されていたEATLP総会、日本税法学会総会等がオンライン開催となったが、令和4年度は、IFAベルリン総会、EATLP総会等、対面又はハイブリッド方式で実施される予定である。 研究計画を再度見直し、研究期間を延長したことで、現地での資料収集、ヒアリングを実施する。オンラインによる研究会、学会への参加、データベースも併用しつつ、研究成果を取りまとめ、総括する。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大の影響で、令和3年度は現地調査のための渡航と国際学会が延期になったことで旅費の執行ができなかった。その後、現地調査ができることとなり、次年度は国際学会への参加も計画している。次年度使用額は、主に調査研究費用として執行する予定である。
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Research Products
(8 results)