2018 Fiscal Year Research-status Report
保険会社の国境を跨ぐ事業再編と課税に関する比較法分析
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18K01268
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
辻 美枝 関西大学, 商学部, 教授 (00440917)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際租税法 / 保険会社 / 事業再編 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題研究は、保険会社が企業グループを組成し国境を跨いで事業展開する場合に、各国の税制がその事業戦略に作用する局面に着目し、保険会社グループの法人所得課税上の問題を比較法分析に基づき研究するものである。 研究初年度である平成30年度は、ドイツの研究機関 Max Planck Institute for Tax Law and Public Finance(以下MPIという)に滞在し研究する機会を得た。その機会を活用し、本課題研究の基礎研究として、保険会社のグループ間金融・資本取引に係る法人税法上の取扱いに関する日本とドイツの制度を中心に比較分析することに主眼を置いた。 MPI滞在中、ドイツを含む欧州の研究者や実務家にヒアリング調査をすることによって、本研究テーマに関する有益な情報・文献の提供を受けることができた。また、IFA(International Fiscal Association)年次総会をはじめ、研究分野に関連する学会等に積極的に参加し、参加者と意見交換をするとともに、本研究に必要な情報・資料収集をした。 平成30年度の研究の具体的内容としては、特にドイツ法人税法上の①支払利子控除制限規定(Zinsschranke)、および②資本収益に関する特別規定を取り上げ、保険会社の特殊性がそれぞれの制度に影響を及ぼしているのか否か、影響がある場合にはその背景・制度設計などを分析した。中間報告として、平成30年11月に①をテーマに、平成31年3月に②をテーマにして研究会報告をした。研究会での議論を反映させた研究成果として、①について平成31年3月に論文「所得課税と支払利子控除制限―ドイツの制度を中心に―」(立命館経済学第67 巻第 5・6 号243頁から259頁)を公表した。②に係る研究成果については、平成31年度(令和元年度)中に公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究はおおむね順調に進んでいる。 法人税法上の利子控除制限規定の比較法分析は、オランダなどドイツ以外のEU加盟国の動向も分析する予定であったが、各国の制度改正が進行途中であったため、平成30年度は経過を追うに留まった。平成30年度内に解決できなかった問題については、引き続き平成31年度(令和元年度)以降に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に取り組んだ利子控除制限規定は、EUではATAD指令(Anti Tax Avoidance Directive)によってその導入がEU加盟国に強制されている。そのためにEU加盟国での税制改正の動きが活発になっていることから、平成31年度(令和元年度)も継続してリサーチを行う。さらに、IFA年次総会の主要テーマが利子控除制限について(“Interest deductibility: the implementation of BEPS Action 4”)であり、その総会に参加して最新の議論に触れるとともに、各国の租税法研究者と意見交換して情報の入手に努める。 平成31年度(令和元年度)は、恒久的施設(permanent establishment)の問題について検討を進める。すなわち、保険会社の所得への課税管轄を決定するためには、保険会社の特殊な業態および各国の規制を踏まえて進出先国でのPE(恒久的施設)該当性を検討する必要がある。その分析の手がかりとして、保険税(insurance premium tax)における固定的施設(fixed place)該当性に関する欧州裁判所での最近の判決例が参考になると考えているため、その検討を行う予定である。この点に関しては、平成30年度中にすでに一部資料を収集済みである。 引き続き、国内外の図書館・研究機関で本課題研究に関係する文献・資料の収集をするとともに、研究の適当な時期に関大租税法研究会等で研究報告をし、そこでの議論を本研究課題に反映させ、成果論文を作成する。
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Causes of Carryover |
(理由)平成30年度は、物品購入に予定した支出を要しなかったため次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度使用額は、平成31年度(令和元年度)に予定している出張のための経費および図書購入費用等に充当する予定である。
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