2019 Fiscal Year Research-status Report
保険会社の国境を跨ぐ事業再編と課税に関する比較法分析
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18K01268
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
辻 美枝 関西大学, 商学部, 教授 (00440917)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際課税 / 保険会社 / 法人税 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、前年度の研究項目「保険会社のグループ内金融・資本取引に係る所得課税の日独制度比較」を引き続き展開し、特にグループ内資本取引に焦点をあてて検討した。具体的には、国外関連法人への出資から生じる収益に係る法人所得課税上の問題として、ドイツ法人税法上の規定を研究対象とし、当該規定の沿革・仕組みをEU法との関連を含めて分析した。中間報告として、2019年9月に関大租税法研究会および11月に租税論研究会(京都大学)で研究報告をした。一連の分析と議論によって、日本の制度とドイツの制度の違いは、両国の経済政策の目指すところ(大きくは、日本の制度が国内企業による海外投資利益の国内還流に主眼を置いたのに対し、ドイツの制度は海外資本による国内への投資を促進させることにあった)の違いに端を発している、ことが分かった。このことは本研究課題における税制と企業の事業戦略との関係を考えるうえで重要な知見であった。本年度の研究成果の一部として、「外国子会社株式の譲渡損益と法人税課税」(税研209号)を2020年1月に公表している。さらに、ドイツの制度は、日本と違い、生命保険会社に対する特別規定を内包している。当該規定に関する導入の経緯・効果についても検討を行った。この研究成果は2020年度に公表する予定である。 前年度に重点的に研究をした支払利子控除制限については、2019年9月開催の国際学会IFA(International Fiscal Association)年次総会の主要テーマがそれであったことから、当該総会に参加し、最新の議論に触れるとともに各国の租税法研究者と意見交換して情報の入手に努めた。この点についても2020年度に継続して調査・研究する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究対象である外国子会社配当益金不算入制度の日本とドイツの比較法分析については、順調に進んでいる。ただし、生命保険会社の特殊性を踏まえた分析の成果を2019年度中に公表する予定であったが、検討が十分ではなかったため公表に至らなかった。 2019年度内に解決できなかった問題については、引き続き2020年度に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に取り組んだ外国子会社配当益金不算入制度は、ドイツではEU法との関係から制度の修正を余儀なくされ、かつ金融危機の影響をうけて金融機関に対する特別規定を導入するなど、その制度導入以降大きな変化を遂げている。2020年度では、引き続きこの制度の検討を進める。また、2019年度の研究対象であった支払利子控除制限規定に関しても、EU諸国の最近の動向をリサーチし分析する。 2020年度は、本研究課題の主要項目である、保険会社の事業再編時の機能・リスクの移転に伴う移転価格税制の適用関係に関する研究を行う予定である。この点に関しては、2019年度までにすでに一部資料を収集済みである。 引き続き、国内外の図書館・研究機関で文献・資料の収集をするとともに、国際学会に参加・報告をして各国研究者と情報交換をし、本研究に関する最新情報の入手に努める。研究の適当な時期に関大租税法研究会・租税論研究会等で研究報告をし、そこでの議論を本研究課題に反映させ、成果論文を作成する。
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