2020 Fiscal Year Research-status Report
保険会社の国境を跨ぐ事業再編と課税に関する比較法分析
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18K01268
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
辻 美枝 関西大学, 商学部, 教授 (00440917)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国際課税 / 保険会社 / 法人税 / 事業再編 |
Outline of Annual Research Achievements |
政府は、わが国の保険事業の国際競争力を強化するために、保険業法改正による規制緩和を進め、国際的事業再編を推進しようとしてきた。しかし、保険事業の国際的事業再編を促進するには、法人税法上の問題解決が重要となる。2020年度は、この観点から、国際的事業再編による機能・リスクの移転に係る国際課税上の2つの問題に着目して研究を進めた。第一は、恒久的施設に帰属する事業利益であり、第二は、関連当事者間での所得移転である。これらの検討にあたっては、保険会社の特殊性を考慮しなければならない。この研究成果として、2020年6月に開催された国際学会the 1st Croatian-Japanese conference “Contemporary problems in economics” に参加し、“Global Business Restructuring of Insurance Industry and Taxation“をテーマに報告をした。当該学会の参加者はその専門分野が経済・法学分野に跨っており、学際的議論ができ、有意義であった。そこでの報告・議論を反映させる形で同タイトルの研究論文を完成させ、当該学会のプロシーディング集に所収されている。この学会報告・論文を通じて、本研究テーマの問題意識の全体像を示すことができた。 また、前年度の主たる研究対象であった、国外関連法人への出資から生じる収益(配当・株式譲渡損益)に係る課税問題について、生命保険会社に焦点をあて、日独比較をするべく、ドイツの生命保険会社に対する特別規定の導入経緯・効果を分析した。2020年8月に保険学セミナーで「生命保険会社の契約者配当に関わる法人税課税について:日本とドイツの比較」をテーマに研究報告をし、その研究論文は2021年度に公表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、コロナ禍の影響により海外渡航が制限され、研究に制約があったことから、予定していた欧州出張によるヒアリング・リサーチなどができず、本研究課題の遂行にもマイナスの影響があった。そのような中でも、国内外を問わず、オンライン会議上でのFace to faceの研究討論ができ、本研究課題の主要項目である、保険会社の事業再編時の機能・リスクの移転に伴う課税問題に関する全体研究を行えたのは収穫であった。2020年度内に解決できなかった問題については、引き続き2021年度に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に本研究課題の全体像を示すことができたので、2021年度はさらにその成果を精緻に進化させ、最終研究論文を公表することに注力する。 引き続き、実地調査に関してはコロナ禍の影響があるものの、国内外の図書館・研究機関のデータベースを有効活用して資料収集をするとともに、オンライン開催の国際学会に積極的に参加して各国研究者と情報交換をしつつ、本研究課題の総まとめをする。研究の適当な時期に関大租税法研究会・租税論研究会等で研究報告をし、そこでの議論を本研究課題に反映させ、最終成果論文を作成する。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍の影響で、予定していた国際学会への参加および調査のための欧州出張が取りやめとなったため、次年度使用額が生じた。 2021年度に引き続き研究遂行する際の出張旅費、資料収集費として使用する予定である。
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