2022 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Law Analysis of Cross-Border Restructuring and Taxation of Insurance Companies
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18K01268
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
辻 美枝 関西大学, 商学部, 教授 (00440917)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際課税 / 保険会社 / 事業再編 / グループ内資金移転 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、保険会社が企業グループを組成し国際的事業展開をする際のわが国の法人所得課税上の問題を比較法分析に基づき研究することにある。研究期間を通じて、OECD・EUの動向及びドイツとの比較をもとに、事業再編過程での関連会社間の資金移転をめぐる問題(支払利子控除・契約者配当課税など)、保険代理人の恒久的施設該当性と保険所得の帰属の問題、及びDebtとEquityの課税上の取扱いの差異による歪みの問題を分析した。 2022年度は、保険会社を含む多国籍企業グループの資金移転をめぐる法人税制上の問題を、OECD・EUでの議論を中心に分析した。法人間のDebtによる資金移転は、債務者側の所得を支払利子により減じさせるのに対し、Equity の場合は所得に影響を及ぼさない。この点は資本構成が特殊である保険会社であっても同様であり、国際的事業再編計画に影響を及ぼしうる。OECDの下で新たな国際課税ルールが策定され、2021年10月に約140か国の合意を得た。欧州委員会は、2021年12月に「21世紀における企業課税」を公表し、企業課税の中長期的な課題解決のための行動計画を示した。これらの議論のなかで、DebtとEquityの課税上の歪みに関係する問題に触れている。特にEUの動向は、わが国の保険会社を含む一般事業会社のEU域内での事業展開に影響を及ぼすのみならず、わが国の法人税制におけるDebtとEquityという古くて新しい問題の試金石になりうる(辻美枝「関連会社間の国際的資金移転と法人所得課税」税研227号(2023)18-24頁。この研究の一部は、IFA日本支部第10回ウェブセミナーでコメンテーターをした際に示唆を得た(鬼頭朱実「BEPS Action 4 に基づく過大支払利子税制の改正とその後の実務上の影響と対応」租税研究877号(2022)99-124頁所収)。)。
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