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2018 Fiscal Year Research-status Report

インターネット上での公権力による情報収集とプライバシー権-その立法的統制

Research Project

Project/Area Number 18K01270
Research InstitutionFukuoka University

Principal Investigator

實原 隆志  福岡大学, 法学部, 教授 (30389514)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywords情報自己決定権 / 個人情報保護 / 法治国家原理 / 適正手続主義 / 刑事手続 / SNS / 監視 / ドイツ法
Outline of Annual Research Achievements

①【研究の具体的内容】本研究は、インターネット上での公権力による情報収集活動のいかなるものが立法を待ってから行われるべきものであるかを、主にプライバシー保護の観点から明らかにすることを目的としている。なかでも、インターネット上での公権力による、どのような情報収集活動が個人に重大な不利益を生じさせ、立法という形での「有権者の代表機関による同意」を要するかを検討の対象としている。そのうち2018年度においては「公権力がどのようなインターネット空間で情報を収集する場合に、立法を待つべきと考えられるか」を中心に研究した。
②【研究の意義】この研究を通じて、情報収集の対象となっている空間の閉鎖性と収集される情報のプライバシー性が高いことを明らかになる。そして、本研究では、インターネット上での公権力による情報収集の限界を、「収集される情報」だけでなく「収集が行われる空間」(等)も類型化することで、より重層的・体系的に解明する。その研究に続くものとしては情報収集を行うための立法の要否の検討があり、波及効果・今後の展望としては、令状の要否をはじめとする法律の内容の妥当性や、個々の場面での情報収集活動の合憲性の研究・解明がある。
③【研究の重要性】日本政府にも、SNSのような空間では他の空間では発信されないような情報も発信されていることを念頭に、それを警察が収集すれば「危険人物」や危険な行動の予兆を発見できるとの期待もあると推測される。その一方で、それが個人のプライバシーを侵害する可能性を考慮する必要があり、その法的統制は不可欠である。特に近年では各国がテロ等が発生するよりも前の時点での「予防」に力を入れており、日本においてもSNS等を活用した捜査活動の活発化とそれに対する個人の保護という問題が必ず起こると思われる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

警察等の情報収集の対象となりうるSNSの主要コンテンツには、字数制限のない文章、字数制限のある短文、画像などがある。他に、相互承認をした利用者間でのみのやり取りもあるが、それはメールの送受信に近いと思われるため、本研究の対象からはいったん除外した。先に挙げたサービスではそれぞれ主目的が異なるが、いずれの場合も画像・動画とそれらについてのコメントの投稿が可能である。それゆえ、警察等によるインターネット上での情報収集活動の法的性質を考える上では厳密な区別は必要ないとの見解に至った。ただ、この見解を示す研究成果は未公表であり、今後の課題となる。
また、2018年度の研究においては、SNS上での情報収集活動の問題を検討するドイツ語文献を用いた。それを通じて分かったのは、自らの身分を偽装した接触・情報収集は「覆面捜査官(verdeckte Ermittler)」の使用と位置づけられることである。この研究は本研究完了後に予定していたものだったが、ドイツ語文献の研究を機に先行して扱う形になった。
加えて、上記のような措置が、ドイツでは「特定性の要請」との関係で問題となっており、その要請の憲法上の位置づけは法律の留保、基本権それ自体、法治国家原理等と考えられていることが分かった。これに対して、日独両国の憲法の規定も踏まえると、日本ではこれを適正手続主義の問題と整理できるとの見解に至った。この結論は、2020年度での研究を予定していた、情報収集を行うための立法の要否に関係するが、このよ研究成果は、現在刊行に向けた作業を続けている単著をはじめ、いくつかの媒体を通じて、今年度の早いうちに公表できる見込みである。
以上のように、予定していた研究成果の公表が未完ではあるが、来年度以降に予定していた研究の一部を行えたため、本研究全体の進捗状況としてはおおむね順調と言えると思われる。

Strategy for Future Research Activity

①【SNSの分類に関する私見の公表】既に2018年度における検討を通じて、SNSが主たる目的としているサービスの差異と、画像・動画・文字の投稿が可能であることには変わりないとの結論には至ったが、その公表はまだ行えていない。そこで2019年度においてはその成果の公表に向けて必要な研究を進める。ただ、この検討は本研究においては導入部分に当たるため、捜査手法の分類に関する検討結果と合わせて公表することになると思われる。
②【捜査手法による分類の検討の開始】そして、本研究の申請当初より2019年度に予定していた研究を進める。インターネット上で発信されている情報と、そのプライバシー性は様々である。また、情報を閲覧できる範囲も利用者全員である場合や登録会員の一部にとどまる場合など、様々である。さらには発信されている情報が文字だけでなく画像・動画・音声も伴う場合もある。以上の観点での情報の類型化を経て、「公権力がどのような情報を収集する場合に、立法を待つべきと考えられるか」を明らかにする。
③【憲法上の位置づけについての検討の継続】当初の予定から前倒しで検討した形になった、インターネット上での警察による情報収集に関する立法の必要性に関する研究も継続する。今年度の研究では、ドイツでいうところの「覆面捜査官」を用いた情報収集活動の日本法での位置づけを検討し、刑事訴訟法と憲法との関係を明らかにする。特に憲法との関係では日本国憲法31条が制定された沿革や大日本帝国憲法期の議論も参照し、補充的な研究を経て研究成果の公表につなげる。さらには、これらの手法を用いた情報収集活動による憲法上の権利の侵害の重大性の検討も進めたい。
④ これらの研究を並行して、本研究とは別の研究も行うことで、本研究を多層的な研究成果へと発展させる。

Causes of Carryover

旅費としての支出は概ね当初の見込み通りであった一方で、2018年度は研究初年度にあたり、研究を行う上で必要な資料とその購入にかかる費用の交付額における割合が不確実な状況で補助金を使用する形になった。その結果、次年度使用額が生じることになったが、8割程度は執行した形となったため、補助金の計画的な使用という点では大きな問題はなかったと考えている。
2019年度においては引き続き補助金の計画的な使用に努める。次年度使用額の発生により2018年度と比べて若干多い金額を支出できることを念頭に置き、2018年度の執行状況をふまえた形で使用する。2018年度の執行状況を見る限り、支出の費目とそれぞれの額は申請当初の予定通りとなる見込みである。

  • Research Products

    (1 results)

All 2018

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results)

  • [Journal Article] 「GPS 捜査」の憲法上の問題 : 比較対象としてのアメリカ国内の議論2018

    • Author(s)
      實原 隆志
    • Journal Title

      福岡大学法学論叢

      Volume: 63(1) Pages: 1-37

    • Open Access

URL: 

Published: 2019-12-27  

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