2020 Fiscal Year Research-status Report
Designing a multi-layered legal framework for the export of infrastructure services: Construction of the theory and its implementation in Asia
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18K01273
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Research Institution | Chuogakuin University |
Principal Investigator |
中川 淳司 中央学院大学, 現代教養学部, 教授 (20183080)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国際投資法 / 国際通商体制 / ポストWTO / 仮想通貨 / 金融規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)国際通商体制の動向に関する分析、(2)国際通商体制の将来に関する分析、という2つの柱を立てて研究を行い、研究成果の一部を公表した。(1)として、「国際通商体制の行方を探る」というテーマで『貿易と関税』に7回にわたる連載論文を掲載した。(2)として、「ポストWTOの国際経済法秩序」を楽観、悲観それぞれの立場から想定する英文の論文集を編集して刊行した。これは2019年度に東京(3月)、ボストン(7月)、ロンドン(10月)で実施した同名のワークショップの成果に基づいている。 以上の他に、本研究助成に関わる研究実績として、仮想通貨をめぐる日本の金融規制の変遷をフォローした論文を公表した。仮想通貨は本質的に国境を越える取引形態であり、そのことは国際金融取引の自由化推進に資する半面で、海外からの匿名のハッキングに対して脆弱であるという課題を持つ。日本の金融規制当局は、仮想通貨が市場に流通した当初、これを規制の対象に加えず、市場における自由な流通に委ねたが、不正アクセスによる顧客の仮想通貨の流出事案が相次いだことを受けて規制の導入と強化に踏み切った。危機対応の観点から、仮想通貨をめぐる金融規制の対応プロセスを分析したものである。 本年度は研究の最終年度に当たっていたが、COVID-19感染症に伴う海外渡航制限のため、予定していた海外調査を実施することができなかった。そのため、研究期間を1年延長して海外渡航制限の解除を待つこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国際投資をめぐる法的制度は、COVID-19感染症の拡大により大きな影響を受けた。外国投資を積極的に受け入れ、自由化する政策をとってきた多くの国々で、外国投資の制限策がとられた。それは特に、COVID-19感染症に関わる医薬品・医療機器の製造分野で顕著である。国民の生命と健康に直接かかわるこれらの分野の製造基盤を確保し、これらを外国投資に委ねることへの警戒から、これら分野の外国投資に事前審査制を導入する国が相次いだ。このような規制強化を国際投資協定(二国間投資協定及び自由貿易協定の投資章)でいかに位置付け、統制するかという新たな問題が発生した。 上記の新たな動きを受けて、主要国の外国投資政策についてのサーベイを行っている。サーベイの結果を整理し、それらの政策、特に外国投資に対する規制強化政策が国際投資協定でいかに位置付けられるかを検討する。これらの措置は、国民の生命と健康に直接関わる分野の製造基盤を国内に確保する措置として説明されている。この説明に一定の合理性は認められるが、これを無制限に認めることは事実上の保護主義を助長させることにつながりかねない。乱用防止の仕組みを国際投資協定に織り込むことが必要と考えられる。 以上の問題意識に基づき、主要国の外国投資政策とその国際投資協定における位置づけと評価について研究を進め、これらの政策に国際投資協定上の適切な統制を及ぼすための方策を明らかにすることを目指す。このため、研究期間を1年間延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、(1)主要国の外国投資政策と(2)その国際投資協定における位置づけと評価について研究を進め、(3)これらの政策に国際投資協定上の適切な統制を及ぼすための方策を明らかにすることを目指す。 (1)主要国の外国投資政策については、国連貿易開発会議(UNCTAD)のデータベースなどのオンライン情報、各国外国投資当局のウェブサイトから一次情報を渉猟し収集する。(2)国際投資協定については、UNCTADの国際投資協定データベースから、関係国の国際投資協定に関する情報を収集し、(1)の政策が協定上どのように位置づけられるかを分析する。以上を踏まえて(3)国民の生命と健康を保護するための投資制限政策に対する国際投資協定の統制のあり方について検討する。 COVID-19感染症に伴う海外渡航制限が緩和されれば、ジュネーブのUNCTADを訪問して資料収集と関係者からのヒヤリングを実施するが、それが難しい場合はウェブサイトの分析と関係者へのリモートヒヤリングの可能性を模索する。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染症に伴う海外渡航制限により、研究計画の遂行に支障が生じたこと。特に、予定していたジュネーブでの調査とヒヤリングが実施できなくなったこと。 本年度は、COVID-19感染症に伴う海外渡航制限の緩和を待って、ジュネーブでの調査とヒヤリングを実施する予定であり、次年度使用額はそのための費用に充当する。
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Research Products
(11 results)