2018 Fiscal Year Research-status Report
国際裁判管轄の規律における当事者意思の役割―準拠法との相互関係も視野に入れて
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18K01276
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 康 京都大学, 法学研究科, 教授 (50263059)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際裁判管轄 / 当事者自治 / 合意管轄 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度においては、外国裁判所への専属的な国際裁判管轄の合意をめぐり、公序法違反要件を問題としてその効力を否定しようとしている一連の裁判例(大阪高判平成26・2・20、東京高判平成26・11・17など)の検討を行ったが、公表論文として発表するには至らなかった。検討の暫定的結論は、次の通りであり、中西ほか『国際私法〔第2版〕』にそのエッセンスは公表した。最判昭和50年11月28日は、国際裁判管轄の合意がはなはだしく不合理で公序法に違反するときは無効とする余地を認めていた。従来,この公序法違反の点は,消費者や労働者との管轄合意について主に争われたが,裁判例は当初,公序法違反による管轄合意の無効を容易に認めない傾向だった(労働契約について,東京高判平成12・11・28など)。しかし,平成23年民訴法等改正による弱者保護のための特則(特に3条の7第5号,6号)が議論されて具体化した頃から,この規定による弱者保護の結論を先取りして実現するためか,外国への専属的な国際裁判管轄の合意をこの公序法違反要件によって無効とする裁判例が多くなっている(例えば,大阪高判平成26・2・20,東京高判平成26・11・17)。もっとも,このような管轄合意は将来、改正法の弱者保護のための特則が適用されるようになれば(管轄合意について3条の7は、平成23年改正法の施行後に締結された合意にのみ適用される。平成23年法律第36号附則2条2項),そのような特則で処理されるのが筋であり,公序法違反要件をふくらませて法的安定性を損なう解釈は避けるべきではなかろうか。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究科内の運営業務に思いのほか時間をとられて、本研究課題の進捗状況はやや遅れている。もっとも、本年前期でこの業務は終了するので、遅れは挽回できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の進め方は、平成30年度に予定したが完成するに至らなかった部分にまず取り組むのほかは、当初予定と大きくは変わらない。それゆえ、以下の2つの問題の検討を行う。第1に、専属的な国際裁判管轄の合意に認められる効力の検討。外国裁判所への専属的な管轄合意を当事者間でしているにもかかわらず、この紛争に関する訴えと、関連があるが別の訴えとを併合して、わが国で提訴された場合に、当事者間ではA国の管轄を専属的に合意したはずの請求についても、民訴法3条の6の併合管轄により、わが国に国際裁判管轄が認められるか。裁判例を手がかりにこの問題の検討を行う。第2に、強行法規と管轄合意の関係の検討。管轄合意の対象となっている紛争に適用される法規が、通常の法規ではなく、国際的にも強行的に適用を欲する場合(絶対的〔国際的〕強行法規)、その強行的適用を確保するために外国への専属的な国際裁判管轄の合意の効力をいかに考えるべきか。最近のわが国の裁判例(東京地判平成28・10・6)を出発点として、諸外国での議論を参考にこの問題の検討を行う。
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Causes of Carryover |
平成30年度において、研究代表者の研究科内運営業務の予想外の負担により、本研究課題の進捗に遅れが生じたために、次年度使用額が生じた。進捗が遅れた分は、次年度に実施する予定である。
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[Book] 国際私法(第2版)2018
Author(s)
中西 康、北澤 安紀、横溝 大、林 貴美
Total Pages
460
Publisher
有斐閣
ISBN
978-4-641-17939-4