2018 Fiscal Year Research-status Report
領海・国際海峡における沿岸国の主権と航行の利益・旗国主義との調整の法構造
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18K01278
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
坂巻 静佳 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (10571028)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海洋法 / 領海 / 国際海峡 / 航行の利益 / 旗国主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、領海・国際海峡における沿岸国の主権と航行の利益・旗国主義との調整に関わる諸論点を検討し、それらが国際法上具体的にどのように調整されているのか分析することを通じて、領海・国際海峡における調整の法構造を明らかにすることにある。2018年度は、領海を通航中の船舶に対する沿岸国の管轄権の内容と限界について、検討することを予定していた。 以上の計画に基づき、2018年度は、領海を通航中の船舶に対する沿岸国の管轄権の内容と限界について検討した。具体的には、自国の領海において無害でない通航を実施している船舶に対し沿岸国が保護権の行使としていかなる措置をとりうるかについて、これまでの検討を深化させるとともに、沿岸国の国内法令の違反について沿岸国がいかなる措置をとりうるかについて検討した。 検討の結果、沿岸国が保護権の行使として広範な範囲の措置をとりうることには意見の合致があるが、「軍艦及び非商業的目的のために運航するその他の政府船舶」に対していかなる措置をとりうるかについては、それらの享有する免除との関係で議論があること、そしてその前提には、国連海洋法条約25条と32条との関係性、保護権と免除との関係性、及び、保護権の性格に関する見解の相違のあることが明らかになった。沿岸国国内法令の違反に対する措置については、とりわけ外国船舶内における刑事管轄権に関する国連海洋法条約27条をどのように理解するかについて、十分な議論がなされてきたとは必ずしも言えないことが明らかになった。 本研究の成果は、理論的には、沿岸国の主権と航行の利益とが現行の海洋法上どのように調整されているのかの解明に資するものであると同時に、実務上は、領海内で無害でない通航を行っている又は沿岸国法令に違反している外国船舶に対し、沿岸国がいかなる措置をとりうるのかを判断する際に役立つものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度実施予定であった領海を通航中の船舶に対する沿岸国の管轄権の内容と限界に関し、沿岸国の保護権については一定の成果を出すことができた。領海における沿岸国の管轄権については検討途中であるが、一定の資料収集と分析とは進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の2年目である2019年度は、「沿岸国の無害通航を妨害しない義務の射程」について検討する予定である。領海における沿岸国の管轄権の内容と限界は、無害通航を妨害しない義務との関係性のなかで規定される部分があると考えられる。2018年度の検討結果と2019年度の検討とをあわせて、領海における沿岸国の管轄権についてさらなる分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
購入を希望していた書籍があったが残額では購入できなかったため、次年度購入することとし、その分が次年度使用額となった。 次年度使用額と2019年度助成金とを合わせて、2019年度も文献資料の収集を進めていく予定である。
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