2019 Fiscal Year Research-status Report
日本の批判的国際法学が国際法理論研究に与えた意義と将来の貢献可能性
Project/Area Number |
18K01279
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
桐山 孝信 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (30214919)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際法学 / 平和主義 / 安全保障 / 平和維持活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平和主義や日本の安全保障のありかたについては、日本は世界的にもユニークな位置を占めることが可能である。その原点が日本国憲法にあることもよく知られている。しかし敗戦後から21世紀の今日までの日本の歩みは紆余曲折を経てきた。 この歩みを国際法学、平和研究の立場から検討してみたのが、「恒藤恭『憲法問題』の時代:1949-1964」である。これは2018年度の大阪市立大学大学史資料室主催のシンポジウムでの報告に加筆・修正したものだあり、サンフランシスコ講和条約から日米安保条約改定と砂川事件最高裁判決に至る日本の安全保障と憲法の関係を理論的、実際的に追求した恒藤恭の学問的軌跡を追ったものである。 次いで、日本の安全保障、平和貢献の軸として挙げられるのが、1992年6月のPKO協力法と現在に至る活動実績である。これについては、国連の平和維持活動の期前・展開・変容を跡付け、日本のPKO協力が翻弄されてきた経緯を追う一方で、平和安全法制の整備によって策定された「国際連携平和安全活動」が、従来の日本の平和貢献への逸脱行為になる危険性を示した論文を公表した。 また、現在の国際社会を基本的に構成している「国民国家」の成立時である20世紀初頭のバルカン半島やトルコでOKなわれた「住民交換」の実行を振り返ってみることで、従前の「帝国の国際法」から「国民国家の国際法」への移行の筋道をたどり、そこでの問題点と国民国家の時代における人権への着者萌芽を示した。これを論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題である、日本の批判的国際法学が国際法理論に及ぼす影響について、正面から取り扱ってはいないが、日本の平和政策を批判的に検討する中で、これまで日本で培ってきた批判的国際法学が極めて有効に機能していることを確信した。 他方で、研究に関連して海外の研究者と意見交換をすべく海外出張を予定したが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、キャンセルせざるを得なかったことで、研究の深化という面で不十分であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は研究課題の最終年度となるので、国際法の基本構造を支える、主権、人民自決権、人権にかかわる論考を準備している。その際の視点は、日本の批判的国際法学の理論的蓄積を踏まえて、現在の世界的状況に対してどのような分析視角を提供することが可能かを念頭に置くことである。なお、これではあまりに抽象的であるので、具体的事例に即して論じることを心掛ける。これらの課題については、学会報告や各種研究会での報告予定があり、それを行うことによって研究者との意見交換が可能である。それを踏まえて、論文として発表することを計画している。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大により、予定していたスイス出張が取りやめになったため、残額が生じたことが理由である。
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Research Products
(3 results)