2018 Fiscal Year Research-status Report
A Comparative Analysis of the Formation, Application and Development of Rules on International Jurisdiction in Asia
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18K01281
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Research Institution | Bunkyo Gakuin University |
Principal Investigator |
金 彦叔 文京学院大学, 外国語学部, 准教授 (00554461)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際裁判管轄 / 国際私法 / アジアの国際裁判管轄 / 比較法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日韓における新しい国際裁判管轄法制の立法化の動きを受けて、日韓の国際裁判管轄に関するルールの形成・適用・発展を比較法的観点から分析することによって、アジアにおける国際裁判管轄法制の調和の可能性や方向性を模索するものである。韓国では現在、国際裁判管轄規定を新たに盛り込んだ改正国際私法案が国会に提出されており、近いうちに成立の見込みにある。日本では、2011年民訴訟法改正により明文化された財産法関連の国際裁判管轄規定(民事訴訟法第3条の2以下)に加え、2018年「人事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立し、人事訴訟及び家事事件に関する国際裁判管轄規定も明文化されるようになった。これまで日韓の間では国際裁判管轄に関するルールについて議論が多くなされてきたが、それらの議論の結果が今回の両国の立法にどのような形で反映されているかを分析することは、本研究において重要な課題となる。そこで本年度はまず、日本と韓国の新しい国際裁判管轄法制について、両国の間の議論が今回の立法に如何に影響したかという点に注目しつつ、比較法的な観点から検討を行った。韓国の新しい国際裁判管轄法制の成立と関連して、立法の背景や経緯、特徴について、日本法との比較から検討を行い、韓国の新法制の比較法的意義を探ってみた。その研究成果を、国際私法学会・国際私法フォーラムで「韓国の新しい国際裁判管轄法制の特徴と比較法的意義」という題で報告した。また、日本の新しい国際裁判管轄に関する規定について、比較法的な観点から考察を行った。最後に、日韓での国際裁判管轄法制の発展過程において、法規範の形成・適用・発展の過程で見られる国際的な統合と地域的な分散化の側面が如何に現れてきたかを、韓国が今回明文規定として新たに導入した「国際的訴訟競合」や「管轄の不行使」に関する規定等を中心に検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目標通りに、特に問題なく順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方向性は、本年度に行われた日韓の国際裁判管轄法制に関する比較法的研究を踏まえて、法規範の国際的な統合と地域的な分散化が、ルールの形成・適用・発展の過程でどのように現れているかを、日韓での国際裁判管轄法制の発展過程を素材に理論的かつ実証的に分析するとともに、日韓でみられる営為が他のアジア諸国には如何に波及し、影響し合うかを考察し、アジア地域における国際裁判管轄法制の調和の可能性や方向性を探ることである。次年度は、これまで行ってきた日韓の国際裁判管轄法制に関する比較法的研究を法規範の形成・適用・発展の過程に注目しつつより深めると同時に、他のアジアの国々(例えば、中国とASEAN)にも目を向けて、それらの国々における国際裁判管轄に関するルールの形成過程に注目していく予定である。また、ハーグ国際私法会議の判決プロジェクト(外国判決の承認執行に関する条約作成)の推移と影響も併せて検討していく予定である。 これらの研究の成果は、今後、論文や書籍、学会(日本、韓国、ドイツ)での報告を通じて発信していく予定である。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた理由は、予定していた物品の購入や一部の旅費を大学の個人研究費で支払ったからである。当該助成金は翌年度分として請求する。使用計画は、2019年度ドイツで開かれるJournal of Private International Law Conference 2019 で研究報告が予定されているが、その際の旅費等に充てたいと思う。
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