2021 Fiscal Year Research-status Report
Effectiveness of International Judicial Procedures in the Current Internatioanl Community: Coexistence and Conflicts of Plural International Judicial Procedures and the Compulsory Jurisdiction
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18K01283
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
河野 真理子 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90234096)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際裁判 / 国際司法裁判所 / 国連海洋法条約 / 国際海洋法裁判所 / チャゴス諸島に対する主権 / 勧告的意見 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、前年度までの研究を継続し、義務的な管轄権を設けている国際裁判制度が相互にどのような関係にあるか、また、そうした多様な裁判制度の中で、国際裁判の義務的性格が強化されることの意義と課題を検討した。特に、紛争主題を人為的に構成することによって、国際紛争の一部分が限定的に義務的な管轄権を設けている裁判手続に付託される先例が増加しており、それぞれの国際裁判所がそうした紛争に管轄権を行使する事例が増えていることは、注目に値すると考えている。そのような国際裁判制度の利用は、原告にとっては便利なものかもしれないが、被告にとっては、国際裁判への同意の範囲を逸脱した事案に対応しなければならないという不合理な結果を生むことになる。こうした現象は、主権国家の国際裁判への信頼を揺るがす結果をもたらし得るものではないだろうか。 こうした主権国家の同意を逸脱した国際裁判制度の利用については、勧告的意見手続における国家の同意の扱いの在り方にも影響を与えるようになっていると考えられる。特に本課題の研究期間内に判断が示されたチャゴス諸島に関するモーリシャスと英国の間の紛争については、国連海洋法条約の下での義務的仲裁制度と国際司法裁判所の勧告的意見制度が利用され、国家間の紛争と国連総会にとって意味を持つ法律問題という区別がなされることによって、全体としては同じ紛争の異なる側面が国際裁判手続で論じられることになった。英国がチャゴス諸島に対する主権に関する紛争を国際裁判によって解決することに同意を表明していない中で、紛争主題を操作することによって複数の国際裁判手続が利用され、その結果として英国が最も望まなかった結論が示されたことと、そうした結果が重要な政治的な意味を持つことは注目されなければならないと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度はそれまでの3年間の研究成果を公表するために研究を継続した。新たな裁判先例の研究等、一応の成果を得たと考えているものの、コロナ禍によるオンライン授業の負担の増加もあり、本来は目標としていた、英語によるモノグラフの公刊を実現することができなかった。 この点を深く反省し、研究期間終了後も引き続き研究を継続するとともに、さらに新たな事例等の研究を深め、英語によるモノグラフの公刊を実現させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度で本研究課題の研究機関が終了した。しかし、新たな裁判先例が蓄積され続けており、全体として1つの紛争の個別の側面が切り取られるような裁判先例が増加しているように思われる。さらに、国際裁判手続だけでなく、国内の裁判手続にも国際紛争の一部が付託されるような先例も見られる。今後もこの分野の研究を継続し、英文のモノグラフの公刊を実現したいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、外国調査の費用の支出ができなかった。このため、図書及び資料の購入に支出することが中心となったが、注文した図書が予定通りに届かなかったため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(13 results)