2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01284
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
福永 有夏 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (10326126)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | WTO紛争処理 / 上級委員会 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、コロナ禍の影響のため予定していた国際学会での発表等ができず、発表後に予定していた論文の執筆についても十分進めることができなかった。 コロナ禍という特殊な状況下において2020年度特に注力したのは、WTO紛争処理の過去の事案を改めて分析しなおすという作業である。分析した結果の一部は、Researchmapにおいて資料として公開した。これまでに、20件近い紛争の分析結果を公開している。分析した紛争の中には、EC/EUエアバス事件及び米国ボーイング事件というWTO紛争処理において最も長くまた難解ともいえる紛争も含まれる。これらの紛争は航空機補助金に関する紛争であるが、国際経済紛争処理手続としてのWTO紛争処理の問題点も露わにしており、本課題の研究に資するものであった。 また、分析した成果の一部を、書籍として2021年度末頃に公開するため準備を進めている。この書籍においては、単に国際経済紛争処理の手続的な側面を研究するのみならず、国際経済紛争処理が実際の貿易紛争の解決にどのように貢献しているのか(あるいはしていないのか)を明らかにする予定である。 このほか、国際学会での発表の機会はキャンセルされるなどしたが、オンラインでウェビナー方式で開催されたアメリカ国際法学会のセミナーで、安全保障に関する貿易紛争処理について発表する機会を得た。国際法の一般原則や他の国際裁判手続の状況も踏まえながら、国際経済紛争処理における謙譲(deference)のあり方について議論した。 上級委員会の改革についても、上級委員会とWTO加盟国とのWTO協定解釈権限の配分に関する問題を中心に、継続的に研究を行った。特に、一般国際法上の解釈宣言に関する議論を踏まえつつ、加盟国が上級委員会と異なるWTO協定解釈を採用することを宣言することを認める制度の導入の可能性を論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
WTO紛争処理の分析については一定の成果を挙げることができたが、コロナ禍のため海外出張などができず、研究成果の対外的国際的な発表という点で十分な成果を挙げることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も、コロナ禍のため国際学会での発表の機会などが制限される恐れがある。 ただ、オンラインでの口頭発表や、書籍も含めた活字での研究成果の発表など、代替的な研究手段を模索したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため海外出張ができず、国際学会での発表の機会やその成果である英文論文の発表の機会が制限された。 2021年度は、可能であれば海外出張も検討したいが、オンラインでの発表や書籍を含む活字での発表も模索したい。
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Research Products
(3 results)