2019 Fiscal Year Research-status Report
The Significance and the Limits of Regionalism in Maritime Legal Order
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18K01290
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
石井 由梨佳 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 人文社会科学群, 准教授 (80582890)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 海洋法 / 国際法 / 地域主義 / 東シナ海 / 南シナ海 / 安全保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は海洋法秩序における地域主義(regionalism)の意義を、理論的、かつ、実証的に検討することを目的とする。本研究はこれまでの海洋法の実証研究で十分に解明されてこなかった、欧米以外の地域に固有の理論及び事例の研究を中心的に行うことによって、国連海洋法条約の下における海洋安全保障理論の基礎を提供するものである。海洋法は、自国の権限領域を広げようとする沿岸国とグローバル・コモンズとしての海洋の自由を確保しようとする利用国との相克を通じて発展した経緯を有する。その中で、地域主義は沿岸国の主張を根拠づけるのにあたり重要な役割を果たしてきた。東シナ海、南シナ海、カリブ海などにおいて示されているように、沿岸国の過剰な権限主張が国際紛争の一因となっている。本研究はそれらの紛争の法的構造を明らかにする一助として、地域主義の法的位置付けを明らかにするものである。 海洋法秩序は、その性質上、規範の普遍性や一般性を重視する。それゆえに海洋をめぐる国際紛争の法的構造を分析するにあたっても、各国の特殊性は捨象されることが多い。それに対して、地域主義は地域固有の社会的、歴史的、政治的な背景を基にした連帯感情、共通利益を重視して、その自主性を保ちながら国家間の協力を促進しようとする原則である。本研究は、地域の特殊性が海洋利用政策と密接に結びついていることに鑑み、海洋法研究において地域主義がどのような意義と限界を有するかを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調に研究を進めることができた。2年目となる今年度は各国の国内法制について調べた前年度の調査結果を踏まえて、国家が係争海域の利用に関して、自制義務をどのように捉えて行動したのか、精緻な事例研究を行うことを予定していた。そして、①西アフリカにおける違法な燃油の船上移転について、2019年12月9日に University of New South Wales開催のワークショップにおいて、②東地中海の紛争について、2020年2月6日にインドネシア大学主催のワークショップにおいて、③カリブ海における海洋境界画定紛争について、2020年3月31日にNew York University - Naval War College主催のオンラインワークショップにおいて、それぞれ報告を行うことができた。①と③については書籍で刊行予定であり、②についてはジャーナル掲載予定である。また、「海底ケーブルの保護についての機能的アプローチの意義と限界」『国際法研究』8号 51 - 71(2020年3月)を著し、海底ケーブル保護に関する海洋法の意義と限界を示すことを試みた。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目となる令和2年度は、これまでの研究成果を総括し、公刊するための論文執筆に当てる予定である。また、各種の研究会やワークショップ、学会などにおいて、本研究の成果を公表していくことを予定している。
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Causes of Carryover |
令和2年度は700000円前倒し請求をしたが、書籍購入等の計画に遅れが生じ余剰が出たおのである。
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Research Products
(5 results)